日本の大学と企業が開発した世界初の衛星を載せたロケットが5日に打ち上げられ、国際宇宙ステーションに到着した。実は、この人工衛星は木製で、日本の伝統技術が大きく貢献しているという。
■地球環境汚染が起きない? 世界初の「木造人工衛星」
スペースXのロケットが5日、打ち上げられた。実は、このロケットには日本の伝統技術を使った衛星が載せられていた。
土井隆雄さん この記事の写真その衛星開発のリーダーを務めたのは、土井隆雄さん。土井さんは宇宙飛行士として2度宇宙へ行き、1997年には日本人として初めて船外活動を行った。
その土井さんがリーダーとなって開発した衛星とは?
「持続可能な社会を作る」 宇宙飛行士 京都大学大学院土井隆雄特定教授
「人間が作ることができる資材を使って宇宙に発展していければ、人間は持続可能な社会を作ることができる。宇宙で木を使えるかどうかを調べようと木造人工衛星を作った」 LignoSat(リグノサット)
世界初の木で作られた「LignoSat(リグノサット)」は、10センチ四方で重さ1キロの人工衛星だ。
金属製の衛星は京都大学と住友林業が4年前から共同で開発を始めた。従来の人工衛星は役割を終えると大気圏に突入させて燃焼させるが、金属製の衛星では粒子が大気に残り、異常気象や通信障害を引き起こす恐れがあるという。
一方、木造の衛星であれば完全に燃え尽き、地球環境汚染は起こさない。
住友林業 苅谷健司氏「木材は宇宙にとっても環境にも優しいし、強度もあるし耐久性もあるというところを(NASAに)お墨付きをもらう一番低いハードルが何かと考えた時に、小型の人工衛星だったので、まずはそこを取っ掛かりにしようと」
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■「納品先が宇宙」工芸界でも初の取り組み■「納品先が宇宙」工芸界でも初の取り組み
今回の木造人工衛星は「通信ができるか」といった試験的なものになる。木材への期待が高まる一方、肝心な衛星を造るためには“あるハードル”もあった。
接着剤も不可温度変化が激しい宇宙空間では、木材が急激に伸び縮みし、釘などでつなぎ合わせると衛星が破損する恐れがある。さらには、有害ガスの発生が懸念されるため、接着剤も使えない。
その難題を解決したのが日本の伝統技術だった。滋賀県のこの小さな工房は、国宝など多くの文化財の修復も手掛けてきた。
黒田工房 臼井浩明代表 黒田工房 臼井浩明代表「初めに聞いた時は、また冗談をみたいな感じでね」
超小型人工衛星に関して、当初臼井代表は半信半疑だったという。
臼井代表「土井先生が直接こちらにお越しいただいて、熱い思いを聞いて、引き下がれないなと」
そこで臼井代表は、桐ダンスなどに使われるくぎや接着剤を使わずに組み上げる工法を用いた。
だが、ここでもう1つ課題として浮かび上がったのが「壁面の厚み」だった。
NASAの基準に合わせ…NASAの基準に合わせ、超小型衛星の1辺は10センチでなければならない。衛星内部の構造が複雑になるにつれ、壁面を薄くするように頼まれたのだ。
臼井代表「0.1ミリ以下の精度でやってくれという話しだったので、だいぶ苦労した」 完成した木造人工衛星
そして完成した木造人工衛星の最終的な壁面の厚みは、わずか4ミリになった。「リグノサット」は無事に国際宇宙ステーションに到着し、来月に宇宙空間に放出される予定だ。
「田舎町ロケットかな」 臼井代表「納品先が宇宙というのは、今までないですし、工芸の世界でも初めてのことだと思うので感慨深いです。田舎町ロケットかな」
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■宇宙環境でも劣化なし 月では「6倍の高さ」に?■宇宙環境でも劣化なし 月では「6倍の高さ」に?
人間が宇宙で社会を作るには生活拠点が必要になってくる。こうした拠点を作るうえでも「木」が注目されている。
元宇宙飛行士で京都大学の土井特定教授、そして一緒に研究をしている村田功二教授に話を聞いた。
木を使うと…2人によると、木はおよそマイナス100℃からおよそプラス100℃まで物性が変化せず安定し、断熱性が高いという。また、宇宙空間には酸素も水分もないため燃えることも腐ることもなく、様々な実験から木は宇宙環境でも劣化せず長く使えるということだ。
月などでもメリットがその木は将来、人間が生活することが期待される月などでもメリットがあるという。月の南極・北極には水があると言われていて、例えば空気を満たしたドームなどを作れば、木を月で生やすことは可能になるという。
また、火星には二酸化炭素の大気と水もあり、月よりも全体的に温度が高いことから、光合成によって人間に必要な酸素を作ることができるとし、月よりも木を育てる環境がいいのではと見ている。
育てるうえでも大きなメリットそんな宇宙空間でもメリットが多い木だが、育てるうえでも大きなメリットがあり、木の高さは重力に関係するという。「月の重力は地球の6分の1なので、月の木は地球の木と比べて、6倍の高さに伸びるとのでは」と土井特定教授は話し、そうなると1本の木からたくさんの材料が取れると期待している。
「なくならない再生可能資源」今後の展望について村田教授は、「地下資源は枯渇するが、木は育てればなくならない再生可能資源。人間が長期的に月や火星などで住むうえでの居住空間作りに大きく役立つことを期待している」と話している。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2024年11月11日放送分より)
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