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 先月末、衆議院選挙と同時に、最高裁判所裁判官の「国民審査」が行われた。審査を受けるのは、任命後最初の衆院選を迎えたときと、その後は10年ごと。しかし、過去に罷免された裁判官はおらず、全員が信任されている。

【映像】誰かわかる?最高裁裁判官の顔触れ

 ただし今回は、審査対象となった6人のうち、4人に「×(バツ)」が10%以上ついた。形骸化しているとの批判も多い「国民審査」について、『ABEMA Prime』では、そもそも最高裁の裁判官がどんな人なのか知られていない現状も交えて考えた。

■最高裁裁判官の「国民審査」とは

 「国民審査」とは、法律が憲法に違反していないかを審査する最高裁裁判官が、職責にふさわしいか国民が審査するもの。やめさせるべき人に「×」印をつけ、過半数で罷免される。今年から在外投票も実施され、衆議院議員総選挙の投票日に審査する。

 最高裁判所には、長官をふくめた15人の裁判官がいて、「識見の高い法律の素養がある40歳以上」から内閣が選ぶ。15人のうち少なくとも10人は、「高裁長官」「裁判官」「検察官」「弁護士」「法律学の教授・准教授」から選ばれる。裁判は、全員で構成する大法廷と、5人ずつで構成する3つの小法廷で行われる。

 今回の国民審査で「×」が付けられた割合は、尾島明氏が11.00%(598万388票)、宮川美津子氏が10.52%(571万5853票)、今崎幸彦氏が11.46%(623万43票)、平木正洋氏が9.97%(542万46票)、石兼公博氏が10.01%(543万9278票)、中村慎氏が9.82%(533万6060票)となった。合計は10.46%(3412万1668票)で、前回2021年の6.78%(4264万2087票)より増加した。なお審査対象の最高裁裁判官は、15人中6人だ。

 裁判所や国民審査の制度に詳しい、明治大学政治経済学部の西川伸一教授は、前回からの急増に「非常に驚いた。左利きの割合は、10人に1人と言われているが、それと同じくらい多くの人が×を付けた」と語る。その背景には「各メディアが裁判官についての情報を出したことに加えて、NHKドラマ『虎に翼』が始まった。国民審査の直前に、袴田事件の無罪も確定して、司法に対する関心が高まった」などの要因があると指摘する。

 西川氏は「裁判官出身者が6人、弁護士出身者が4人。残りの5人は“学識経験者”で、大抵は検察官2人、行政官1人、外交官1人、学者1人の構成になっている」と解説する。「最高裁を作るときに、法曹界に限らず、一流の人々を入れて質を高めようとした。最高裁裁判官は、必ずしも司法試験に受かっている必要はない」。

■最高裁裁判官はどこまで知られているのか

 選挙の候補者と異なり、国民審査では裁判官がアピールする機会がないため、知名度に乏しい。また、顔写真もなく、名前だけが書いてある状態で、選び方に困るという意見もある。

 ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は、「わからない人がほとんどで、たまに調べる人がいる」といった現状を踏まえて、「わからないなら、とりあえず×を書く」という投票行動を提案する。「×の平均が30%になれば、ちゃんと考えた20%が加わって、50%に達する。国民感情とずれると、裁判官も気をつかうようになり、日本社会にとって良くなるのではないか」。

 なんもり法律事務所の南和行弁護士は、「どう判断材料を提供するか」に着目する。「自分の価値観や、法律についての見識を語る機会は、もっと多くていい。判決後には『私は憲法違反じゃないと思っている』など、それぞれの裁判官の意見が出るが、それを記者会見でも行えばどうか。日頃から“自分の意見”を表明する場を持てば、国民審査の時に『この人は前からどうかと思っていた』と×を付けられる」と提言する。

 西川氏によると、かつて第2回の国民審査では、対象だった5人がラジオ出演したこともあるという。「NHKラジオ第1で15分間。所見を1人3分語った事例がある。その時だけは記者会見も行った。前例があるため、政見放送やYouTubeでも行えるのではないか」。

■過去に罷免者ゼロ「×」をつけることに必要性

 今回審査対象になった裁判官は、全員が60代だ。「かつては50代の裁判官も多く、定年の70歳までに、もう一度審査される人がいた。しかし、2回目の審査を受けた人は、歴代190人以上のうち6人だけ。当初の想定より、高齢化が進み、就任ルートも硬直化してきた。各ジャンルの重鎮となると、60歳を超えてしまう」。

 ひろゆき氏は「罷免率10%は、国民にとって『ものすごい問題を起こした人はいない』ということ」としつつ、今後の動きを予想する。「同性婚が最高裁で認められると、×を付ける人は増えるのではないか。ただ、どの判事が、どの判決で有罪・無罪を出したかは、誰も覚えていない。結果として、誰だかわからず、みんなに×を付ける雑な感じになってしまう」。

 そして、情報提供を増やすためにも、“×”を呼びかける。「『わからないから×』が増えれば、最高裁は情報を出さざるを得ない。ある程度、×の割合を高めていくのがいいだろう」。
(『ABEMA Prime』より)

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