東海地方の2人の町長が25日、辞職会見を開きました。1人は愛知県東郷町の井俣憲治町長(57)、もう1人は岐阜県池田町の岡崎和夫町長(76)です。ハラスメントで辞職に追い込まれた2人の町長が、会見で語ったことは。

■「自分や町が考える良い機会に」

自らが行った数えきれないほどの“ハラスメント”について、2時間以上にわたって説明を行いました。

愛知・東郷町 井俣憲治町長
「それまでの自身が無知であったこと、不勉強であったことを改めて恥じると感じる期間であったと思います。ハラスメントに対してどう取り組んでいくのか。私が東郷町役場が東郷町がしっかり考える機会になったと思います」

24日に辞職願を出した井俣町長。調査をした第三者委員会によりますと、2018年の就任当初から繰り返しハラスメントを行ってきたとされています。「お前らの脳みそはハトの脳みそより小さい」「飛ばすぞ」などのパワハラに加え、「子どもを作れ」などのセクハラ。「育休を1年問ったら殺すぞ」というマタハラ発言など、108人の職員に対してのハラスメントが認定されています。

愛知・東郷町 井俣憲治町長
「(Q.『育休を1年取ったら殺すぞ』と実際に言った)記憶がありません」

「ハラスメント」という言葉がいたずらに使われるという懸念を示す一幕もありました。

愛知・東郷町 井俣憲治町長
「正しくハラスメントを抑止するためには『ハラスメント』という言葉をいたずらに使うことも抑止する必要がある」

井俣町長をめぐっては、ハラスメントが降格人事につながったという指摘もされています。

東郷町第三者委員会 堀龍之委員長
「ハラスメントが原因で退職した人がいるとは考えている。降格になった人も同様にいると考えている」

ただ、町長はというと…。

愛知・東郷町 井俣憲治町長
「(降格人事は)一切していません。明言できます。(Q.なぜ明言できる)そういう人事がされたという報告を受けていない」

井俣町長のパワハラを告発した元職員は…。

告発した元職員
「第一印象としては反省が感じられないと思った。相変わらず自分が絶対上位。そんな態度だったので、とても信じられない気持ちでいっぱい」

■「独りよがりで裸の王様だった」

辞職を決めた町長がもう1人。岐阜県池田町の岡崎和夫町長です。

岐阜・池田町 岡崎和夫町長
「(Q.この後、辞職願を出すが気持ちは)昨晩は一睡もできませんでした」

岡崎町長は、第三者委員会の調査で15人の職員へのセクハラ行為があったと認定されました。26日に議会の同意をもって辞職となります。

岐阜・池田町議会 重綱秀次議長
「当然、辞職に値する。遅すぎたのかなということも私たちは感じていますので」

“遅すぎた”と議長が嘆くのも無理はありません。報告書では20年ほど前の被害も認められました。

池田町第三者委員会 幅隆彦弁護士
「キスしようとしたり、おしりを触ったり、抱きついたり、胸あるいは胸付近を触ったということがあった」

なかには4日続けて被害に遭った女性も…。

池田町第三者委員会 幅隆彦弁護士
「最初は手を握る。それから翌日、翌々日、さらに4日目とエスカレートとしていった。衣服の上からではございますが、二の腕、太ももを両手で触った。それから陰部を触る」

こうしたセクハラの多くは町長室で行われました。

岐阜・池田町 岡崎和夫町長
「(Q.どの行為が記憶にある)手を握ったり二の腕を触ったことは覚えている。(Q.密室の自覚。そこならできると)密室ならできるという思いはない。ただ職員として決裁を持ってくるので。相手に対する気持ちに欠けていたと痛感している。独りよがり“裸の王様”だった」

岡崎町長は2003年に無投票で当選し、以降20年以上にわたり町長を務め、現在6期目。長年続いた“行為”について、報告書は“町への影響力は絶大”で“独断での人事も可能”として、職員が委縮した状態にあったことも一因だとしました。

岐阜・池田町 岡崎和夫町長
「(Q.“裸の王様”なぜそういう状況に)私としては3期きて、自分で選挙戦も戦ってきて、自分自身として思い上がりがあったのではないか。票をもらうために握手をするとか接しないといけないと言われた。それの延長線上で気楽に、気楽にと言ったら語弊があるが、身近な意味でそういう行為が出てしまったんじゃないか」


■辞任続出…地方自治の課題は

ハラスメントによる自治体トップの辞任が相次いでいます。問題はどこにあるのか。地方自治に詳しい、大正大学の江藤俊昭教授に聞きました。

江藤教授はまず「地方自治の構造的な問題点」を指摘しています。

江藤俊昭教授
「地方自治は『独任制』。つまり、行政機関の決定者が1人のため、首長に様々な権限が集中することで『すべての権限を持っている』『何をやってもいい』と“勘違いする首長”が一部にいることが問題。住民・職員・議会など多くの声を聞いて職務に当たる。“総力戦の自治”ができなければ、地方の衰退につながる」

(Q.近年、地方の首長選挙では候補者がおらず、無投票当選が増えていることも影響していますか)

江藤俊昭教授
「候補者は複数いるのが望ましい。ただ、地方の首長選挙において無投票当選が年々増加していて、半分以上が無投票で決まる状況です。本質は投票か無投票かではなく“住民が候補者の人柄などを見られる機会”を増やし、政治への関心をなくさないこと。“住民の参加意識”が重要。そういった市民の目が候補者の緊張感につながる面もある」


■トップの“暴走”どう防ぐ

選ばれたトップがハラスメントをした場合、どう対処すればいいのか。そのために重要な一つとして、江藤教授が挙げたのが「ハラスメント防止に関する条例を制定すること」です。

現在、条例を制定しているのは全国1700以上ある自治体のうち、52自治体。江藤教授は「全国的に少なく、数を増やしていくことは当然」としたうえで、条例について大事なポイントを2つ挙げています。

1つ目は「条例の制定は市町村ではなく都道府県レベルで」ということです。

江藤俊昭教授
「相談窓口を設けても、顔見知りが多い、狭い地域では相談しにくい可能性がある」

2つ目は「条例の中身」です。

江藤俊昭教授
「今、制定されているなかには“理念条例”も多くあるが、“実効性のある条例”が必要。例えば、第三者委員会の設置、そして問題があった場合の辞職勧告など、具体的な内容を盛り込んで、対象も首長・議員・職員と幅広くすることが重要」

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