昨年注目を集めた「悪質ホストクラブ」問題を受けて、ホスト業界は高額支払いの原因となる「売掛金」の廃止など、自主規制を行うと発表した。さらに警察も全国のホストクラブに立ち入り調査を実施し、200件以上の行政処分が行われるなど、取り締まりが強化されている。
【映像】“ホス狂い”で売掛金1000万円、売春した娘を持つミドリさん
しかしながら、いまなお高額な支払いを続ける「ホス狂い」と呼ばれる女性は多く存在する。悲痛な叫びを訴えるのは、その母親も同様だ。東京在住のミドリさんは「うちの娘に限って、全く信じられなかった。地獄のようだった」と振り返る。
ミドリさんの娘は4年前、マッチングアプリで出会った男性と付き合い始めたが、実はその男性はホストだった。『ABEMA Prime』ではミドリさんとともに、親から見た悪質ホスト問題について考えた。
■娘が“ホス狂い”になってしまったミドリさん
大学生で一人暮らしをしていた娘(当時20)は、マッチングアプリで出会い交際した男性から「実はホストで働いている。最初は安いから遊びに来て」と誘われ、恋愛感情でホストに通い続けた。半年であっという間に売掛金は1000万円以上に膨れ上がり、泣きつかれた親が代わりに支払った。その後、娘は実家に連れ戻されるも失踪し、再びホストのもとへ。ホストクラブの斡旋で、風俗店で働いていたという。
ミドリさんによると、「コロナで学生生活に制限があり、マッチングアプリで友達を作ろうとした」と、娘とホストの出会いを語る。「学生を名乗る21歳の男性と交際して、恋人関係になった。当時のホストは、マスコミからもアイドル扱いされていて、一般女性がホストクラブに行くハードルは下がっていた。『初回無料』と言われて、軽い気持ちで行ったのだろう」。
娘は、元々は真面目で大人しい性格で、仕送りとバイト代を上手に管理していた。しかし、「大学から単位が足りないと連絡がくる」「部屋が乱雑で汚い」「夜遊びしている」など、娘の生活に違和感を覚え始めた。そして、娘から「お金が払えない」と連絡があり、事態が発覚し、「まさかウチの子が」と驚愕したという。
20歳の若さゆえに「恋愛も社会経験も、お酒の飲み方も知らない」状態だった。「男性にあおられて、高額のお酒を飲まされ、あり得ない額の売掛金をかぶらされた」。そんなある日、突然「締め日」での返済を迫られる。
そして、泣きながらミドリさんに相談した。「『返さないと迷惑がかかる』『彼をナンバーワンにしたいのに』と混乱して、正常な判断ができなくなっていた。多額の借金があると聞き、青天のへきれきだった」。
最初に聞いた時、ミドリさんも「ホストクラブが何かも知らない」状態で混乱し、「額も額で、娘も詳しい話をしたがらない。怒鳴り散らしたが、娘はただ涙を流すばかりで、本心を語らず事情がつかめなかった」と振り返る。
支払いにあたっては「警察や弁護士に相談したが、返済期限が1週間後に迫っていたため、すぐに解決できなかった」と説明する。「娘が殺されるかもしれないと思った。歌舞伎町で若い女性の自殺が相次いでいるニュースを見て怖くなり、必死の思いでお金をかき集めて、現金で返した。当時は反社会的な人々と離れられると信じていた」。
■周りからは「親のせい」と批判も
ネット上では「ホス狂い」になる原因として、「親の愛情が足りないから」「安心できる居場所を作れなかった家庭のせいでは」「親として借金払って2度と行かせないようにすべき」「金銭教育をちゃんとしないといけない」のように、親への批判も見られる。
親子関係は良好だったのか。ミドリさんは「親である私が『問題ない』というのも妙な話だ」と前置きしつつ、「弁護士や警察、行政窓口、親戚からも『娘がこうなるのは母親が悪い』と言われ続けた」と明かす。
そんな時に出会ったのが、歌舞伎町で悪質ホストにハマる女性の親を支援している団体「青母連(せいぼれん)」だ。「青母連に出会い、親のせいでも、家庭のせいでも、本人の問題でもないと、つくづく思った。若い女性であれば、全員が取り込まれる可能性がある」。
青母連の代表である玄秀盛氏によると、悪質ホストクラブと風俗店には「負のサイクル」がある。ホストクラブは完全にマニュアル化して、風俗勤務を見越して高額請求をする悪質性を持つ。一方で、風俗で働くことで金銭感覚が狂い、再びホストに入れ込んでしまう。
玄氏はコロナ禍の影響が大きかったと指摘する。「授業も勤務もオンラインになり、心が寂しい時に、ネットで格好いい人を見つけて、レスポンスが返ってきた。ちょっとしたことで引っかかる」。初回は無料で、なかにはギフト券をくれるところもあり、「そこでグルーミングされる。彼氏やクラブ活動、親密な友人の有無でも変わる」という。
ミドリさんは、青母連に集う親の話を聞くと、「みんな普通の子だ」と語る。「『親のせい』や、娘の抱える課題など、個人的なことを超えている。ついこの間まで高校生だった18〜20歳あたりの純朴で、だまされた経験のない女性が、店ぐるみで取り込まれる。どれだけ意志が強くても抜けにくく、ほとんどの子が風俗へ行ってしまう。そのスキルも巧妙だ」。
■どんな対応が必要?
悪質ホストクラブに係る検挙事件は、2023年1月〜2024年5月で76件に及ぶ(警察庁調べ)。主な事件としては、支払いを滞納した女性客に売春するための客待ちをさせ、その際にGPSアプリで位置情報を監視したことで「強要罪」に問われたケースや、マニュアルをもとに女性客を性風俗店に紹介し、「職業安定法違反」となったことなどが挙げられる。
いざ娘が“ホス狂い”になったとき、親にできることは何か。玄氏は「親に請求が来て、脅されても一切払わないのが原則だ。払ったら取り返せないし、払っても娘を売春させる。お金を払わない上で、娘の逃げ場を残すために、絶対に縁は切らない」とアドバイスする。
ミドリさんは「ひとたび取り込まれてしまえば、親にできることは何もない」といい、「連れ戻す方法はなく、それほど完成度の高い手口だ。世間では『だまされる女性が悪い』と自己責任論が言われている。娘たちは一見、自分の意思で売春するように見えるが、これは意図的に作られた“ホスト依存症”だ。カルト宗教に匹敵する認知のゆがみがある。いちずな女性を巧みに操作して、心の弱いタイプを取り込む」と話す。
そして自らの経験から、若い娘を持つ親に向けて、警鐘を鳴らす。「娘を守りきることができずに後悔している。入口はホストクラブにおける恋愛詐欺で、出口は性搾取目的の人身売買だ。普段から家庭で、思春期を迎えた娘たちと話し合うことで、少しは違ってくるかもしれない」と述べた。
(『ABEMA Prime』より)
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