大学生の石田翔太さんは、高校の英語の授業で「発音」を笑われた経験を持つ。中学まで海外のインターナショナルスクールで過ごしたが、帰国後の高校1年での授業で笑われ、以降はわざと日本語に寄せた発音にした。日常会話でも、英単語が混ざると時に流暢な発音になり、「イキるな」と言われたこともあったという。
【映像】議員のネイティブ発音に笑いが起きた瞬間
最近では国会でも、議員が「NATO」をネイティブ発音しようとして、カタカナ英語に言い直し、笑いが起きる場面があった。なぜ日本では、英語を正しく発音すると、笑いが起きるのか。『ABEMA Prime』では、経験者とその原因を考えた。
■帰国子女が日本の授業でびっくり「英語を流暢に話したら笑われた」
石田さんは高校時代を振り返る。「流暢に話したら笑われた。最初はなぜ笑われているかわからなかったが、後から『格好付けている』『イキっている』と言われ、すごく傷ついた」。それ以降は「英語を流暢に話すのをやめて、カタカナ英語に持っていった。当時はずっとカタカナ英語になっていた」という。
気象予報士の米津龍一氏は、気象キャスターになる以前、アルゼンチンに1年間留学し、営業職でアメリカに5年半駐在した経験を持つ。アメリカでは、発音にコンプレックスがあり、笑われることもあった。しかし、発音を気にしていたら話せなくなってしまう、相手側が感じ取ってくれるなどの理由から、発音が全てではなく、気持ちが大切との結論に至った。
NATOに近い例として、「量販店のコストコは、英語だと“コスコ”。アメリカ人に住んでいて、日本に帰ってくると、コスコと言いたくなるが、周囲からは『なに言ってるの』といった反応をされる」と経験談を語る。
17年の専業主婦を経て、65歳で起業した薄井シンシア氏は、「日本社会では“出ている杭が打たれる”」と指摘する。「娘も海外で育ったが、日本に帰ると日本風に発音する。周りの日本人に合わせようとする意識があるのではないか」。
■なぜ英語をうまく話すと笑われるのか「嫉妬みたいな部分もある」
なぜ笑いが起きるのか。石田さんは「嫉妬みたいな部分もある」として、「自分も英語を学んでいたとき、話せる人に対して憧れがあった。その感情が笑いや嫉妬につながっている」と考察する。
これに米津氏も賛同して、「しゃべれないことをコンプレックスに感じている人が多い」と語る。「英語が使える人間に対して、うらやましさや嫉妬をごまかすように、馬鹿にしたり笑ったりする感じではないか」。
しかし発音を笑う文化は、上達を阻む要因にもなる。石田さんは「挑戦しないと、失敗も成功もない。発音する機会がなければ、英語も上達しない。日本人が英語を話せるようになるために、もっと発音を練習できる、実践的な空間があるといい」と提案する。
米津氏は「日本人は文法にとらわれるが、外国人は逆に文法は適当で、遮二無二しゃべる」と、両者の違いを分析する。「学んだことを口に出さないと、身に付かない。どちらがいいかは決まっていないが、海外経験から『まず口にする』ことが重要だと感じる」。
■翻訳ツールは進化も求められる人対人のコミュニケーション
最近ではAIを活用した翻訳ツールなども普及している。しかし、石田さんは「ツールだけでは伝えられない部分がある」と考えている。「声のトーンでも意味は変わる。怒っているのか、悲しいのか、やさしいのか。感情がくみ取れるところに、人間が放つ言葉の良さがある」。
米津氏は「場面による」と説明する。「旅行では翻訳機での軽いコミュニケーションも有用だが、ビジネスでは現実的ではない。言葉を翻訳するだけでなく、気持ちが通じ合うことで、ビジネスが成り立つ。仕事に英語を活用したいなら、自分自身で話せる努力が必要だ」。
■EXIT兼近大樹「笑われても楽しい、恥ずかしくない雰囲気、メンタルを作るのが一番大事」
「EXIT」の兼近大樹は「日本的な風潮として、『笑っちゃダメ』がある。笑われることが恥ずかしいから、みんなに合わせる。子どもの時から『笑われてもいい』と教えて、笑われても楽しい、恥ずかしくない雰囲気やメンタルを作ることが重要だ」と提案する。
シンシア氏は「英語だけでなく、どんな言葉もしゃべれるまでは格好悪い。でも、この道を通らないと、絶対にしゃべれない。格好悪くなる覚悟で勉強した方がいい」と、言語習得の極意を語った。
(『ABEMA Prime』より)
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