9日、「袴田事件」で死刑確定した袴田巌さんが再審で無罪確定した。疑惑の証拠を盾に、なぜ袴田さんは死刑囚とされてきたのか。元検事の亀井正貴弁護士が検察の体質を解説した。
【映像】プロボクサー時代の袴田巌さん
1966年に静岡県清水市(現・静岡市清水区)のみそ製造会社専務宅が全焼し、焼け跡から一家4人の遺体が発見され、強盗殺人放火の容疑で袴田さんが逮捕され、最高裁で死刑が確定した。
再審で静岡地裁は、「違法性の高い取り調べにより作成された検察官調書」「犯行時に着ていた5点の衣類」「袴田さんの実家で見つかった5点の衣類の端切れ」について、証拠の捏造を認定した。
無罪確定により、検察の姿勢と本質が問われるなか、畝本直美検事総長は、異例の談話を発表する。「本判決が『5点の衣類』を捜査機関のねつ造と断じたことには、強い不満を抱かざるを得ません」とする一方で「袴田さんが、結果として相当な長期間にわたり、法的地位が不安定な状況に置かれてきたことにも思いを致し、熟慮を重ねた結果、本判決につき検察が控訴し、その状況が継続することは相当ではないとの判断に至りました」との内容だった。
あくまで検察は、袴田さんが犯人だと認識していると解釈できる談話に対して、弁護団の小川秀世弁護士は「談話自体を撤回してくれ」との要求とともに、袴田さんへの直接謝罪に加え、証拠の開示が遅れたことを含めた検証を求める。「無罪確定後に『やっぱり犯人だと思う』と警察や検察が言うことがあった。それについて名誉毀損が認められた例がある。今回の検事総長の談話は、非常に軽々しい、法律家としてとんでもない内容だった」と非難した。
では、なぜこれまで、疑惑の証拠が肯定されてきたのか。亀井弁護士は、5点の衣類について、「詳細に検証しておらず、明らかにおかしいかは言いにくい」としつつ、「証拠上いけると思えば、厳しい状況でも、検察は有罪を取りに行くのが仕事だ」と語る。
心証を判断する上では、「状況証拠を積み上げていった先に、ストーリーが成り立つか」を見ていくそうだ。その上では、「マイナス証拠とプラス証拠の整合性を見ることが本当は必要」だと指摘する。
また、「捜査機関は疑ってかからないと捜査できない」と断言する。「無罪推定で捜査していたら、事件は組み立てられない。『犯人じゃないか』『消極証拠をつぶせるか』から組み立てていき、消極証拠がつぶせなければ、起訴をやめる方向になる」と説明した。
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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