人類の長年のパートナーである「犬」をめぐって、先日ネット掲示板で議論が勃発した。それは「ミックス犬」の是非だ。違う犬種を人工的に交配させて生まれた犬のことで、ゴールデンレトリバーとプードルを掛け合わせた「ゴールデンドゥードル」や、シベリアンハスキーとポメラニアンを掛け合わせた「ポンスキー」などがある。
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人間の都合で異なる犬種を交配することに疑問の声が上がる一方で、人気飼育犬種ランキングでは、トイプードルやチワワを抜いて、4年連続1位が「ミックス犬」だ。『ABEMA Prime』では賛否双方の立場の関係者とともに議論した。
■ミックス犬に賛否
ミックス犬には明確な定義がないが、異なる犬種(純血種同士)の人為的な交配で生まれる種を指すことが多い。ミックス犬などの販売応援サイト「ペットの実家」を運営する藤本真央氏は、「“チワワ”や“ポメラニアン“のように、名前が付いている純血種同士を人為的に交配させたのがミックス犬だ。一般的な“雑種”は、どんな犬種が混ざっているかわからないが、ミックスはどの犬種が親かがわかる」と解説する。
アイペット損害保険の調べによると、2023年の人気飼育犬種ランキングは、ミックス(小型犬)が4年連続1位となった。2位以下は、トイ・プードル、チワワ、柴犬、ポメラニアン、ミニチュア・ダックスフンド、ミニチュア・シュナウザー、フレンチ・ブルドッグ、ヨークシャー・テリア、シー・ズーといったトップ10になっている。
ミックス犬が人気な理由について、藤本氏はペットショップ店長の経験から、「オンリーワンだからではないか」と考察する。「東京都内の高級住宅街では、チワワやトイプードルを見つける方が難しく、ミックスしか人気がない。さまざまなミックスがあり、バラエティーの豊かさから人気なのだろう」。
コラムニストの河崎環氏は「“人為的”という点が引っかかる」といい、「ブリーダーが、命を投機商品的に扱っているように感じる。希少性の高さや、かわいさから『売れる』ために掛け合わせるなど、『命を何だと思っているのか』と思う」と指摘する。
ペットジャーナリストの阪根美果氏は、安易なミックス犬の繁殖に警鐘を鳴らす。「純血種でもミックス犬でも、どの子も1匹しかいない。顔も違えば、親や祖先のルーツも異なる。どの子もオンリーワンだと考える」と述べた。
■ミックス犬のメリット・デメリット
ミックス犬に対して多様な意見があるなかで、藤本氏は遺伝的多様性の重要さを語る。有名血統の純血種だとしても、健康面に問題がある種もあり、純血種が現代にそぐわなくなっている面もあるとの立場を取る。
ミックス犬のように人工的に交配させた犬が「デザイナードック」と呼ばれることがあるが、「純血種もデザイナードッグだ」と指摘する。「純血種も管理されてきた。どんな子が生まれるかが、事前にわかるのはデメリットだ。人間は子どもを作る時、どんな子になるかわからないが、純血種ではわかる」。
一方で、阪根氏はミックス犬の「健康リスク」の高さを懸念している。父母両方の遺伝的疾患を引き継ぐおそれや、大型犬と小型犬の交雑では骨格異常などの可能性もある。また、望んだ外見的特徴が出ず、体の片側だけ長毛、顎のサイズが上下で違う…といった個体もあるという。そして、利益優先の悪質なブリーダーの存在も問題に。
利益目的の交配で「安易にミックス犬を作っている人が多すぎる」と批判する。「責任を持つブリーダーは、リスクが高いミックス犬を作らない。犬種ごとに起こりやすい遺伝的疾患がわかっていて、管理せずに交配すると、両親双方の遺伝を引き継ぐ可能性がある」。
遺伝の一例として、ラブラドールレトリバーとプードルの血を引く「ラブラドゥードル」を紹介する。「盲導犬に使われるラブラドールと、毛が抜けにくいプードルを掛け合わせると、アレルギーのある人間にも対応できるのではと誕生したが、29の遺伝的疾患を引き継いでいる可能性があると言われている」と説明。
大型犬と小型犬については、「体格差があっても、交配そのものは人工でできる」が、子は骨格異常のリスクにさらされる。また交配によって、毛の長さが整わず「洋服を着せると一部が皮膚疾患になったり、体温が合わなかったりする」ケースや、顎の形状により「ご飯がこぼれたり、虫歯やかみ合わせの悪さが出てきたりする可能性がある」という。
■「全身ハイブランドのワンちゃんに違和感」
AgeWellJapan代表の赤木円香氏は、「野菜の見た目が“映える”ように遺伝子を組み換える感覚と同じになってはいないか」と指摘する。「表参道を歩いていると、全身ルイ・ヴィトンの人が、全身ヴィトンのワンちゃんと歩いている。ワンちゃんをアクセサリーとして見ている価値観の人に、ブリーダーが商売するのに違和感がある」。
タレントの柏木由紀が「見た目のために交配し、かわいくならなかった犬はどうなるのか」と質問すると、藤本氏は「『処分される』と言われがちだが、最後まで家族を見つける。ペットショップは15〜20万円でブリーダーから仕入れている。売れ残ったから処分するのは、経営的にも難しい」と返した。
環境省のデータ(令和4年度)によると、日本のペット(犬・猫)は5万2793匹が新たに引き取られ、4万129匹が返還や譲渡される一方で、1万1906匹が殺処分されている現状がある。阪根氏によると、「これでもかなり減った」そうだ。「殺処分は、凶暴で人を傷つけてしまったり、すでに病気にかかっていたりで、譲渡できない子が多い。譲渡可能な子は、動物愛護団体や動物愛護センターが、引き受け手を探す努力をしている」。
悪質ブリーダーを見分ける方法はないのか。「責任あるブリーダーは、ペットショップやオークションには卸さない。自分で納得する飼い主を見つけて、譲渡しても生涯サポートする。そういうブリーダーの評判は、ネットに上がっている。現地で見て確かめて、評判を聞いて判断するのが一番だ」とコツを教える。
藤本氏は「大事なのは『この人だ』と信じることだ」と語る。「結局は自分次第。ペットショップに卸しても、愛があって面倒を見る人もいる。自分が納得するまで調べることが一番大事だ」と述べた。
(『ABEMA Prime』より)
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