子どもや保護者が食事しながら交流する「こども食堂」は、貧困や孤食対策にもなっているが、困った利用者も増えている。大阪のたこ焼店「たこば」では、通常6個480円のたこ焼を期間限定で10円にしたところ、「中学生が10円のたこ焼を、小学生に100円で転売していた」「一緒に来店した親からも『10円にして』と言われた」といった問題が起き、ルール変更を余儀なくされた。
一方で、貧困層の中には「他人の施しを受けたくない」「貧しいと思われる」などを理由に、こども食堂を敬遠する親もいる。『ABEMA Prime』では、善意で成り立つこども食堂を支えるためにどうすればいいか、「たこば」店主らと考えた。
■全国に9000カ所以上、半数以上がボランティア・市民団体が運営
こども食堂は2012年に東京都大田区で誕生した。都では「子どもや保護者がバランスの取れた食事をとりながら相互に交流する場」と位置づけられている。利用対象は、子どもだけ、保護者も、誰でもなどがあり、実施方法も月1回、毎週日曜日、毎日などがある。いずれも無料または低額での提供が一般的だ。「こどもの貧困対策」「孤食・個食などの回避」「世代間交流」「地域交流・地域づくり」といった役割を担っている。
こども食堂の数は年々増加し、認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえの提供資料によると、2023年には9132カ所が存在している。参加人数の累計は1584万人、うち、こどもは1091万人(いずれも推計)にのぼる。
むすびえによると、運営者は市民活動・ボランティア55.1%、NPO法人16.6%、個人13.0%、社団法人4.5%、社会福祉法人4.0%などの割合だ。運営形態は、会食(参加者が会場に出向く)、弁当持ち帰り、フードパントリー(食材を会場に取りに来る)、宅配(弁当・食材・日用品を届ける)といったものがある。
運営資金や物資はどこから来るのか。まずは、企業・団体の物資支援・クラウドファンディング・寄付などがある。また、規模など条件はあるが、国・自治体からの補助金も存在する。例えば、東京都では月額4万円(上限年間48万円)の「子供食堂推進事業」があり、大阪府でも運営者に対し食品セットを配布している。
■大阪のたこ焼き店でトラブルも店長「こども目線で話すようにしている」
「たこば」店主の島田良太さんは、「いろんな人からの助けがあって続けている状態だ。食材費が圧倒的に苦しい」と語る。たこばのこども食堂は「月1回ペースで、たこ焼6個が10円や50円になる」。SNSでも告知して、「8月は1日100人くらい来た」という。
親からは「電気代などが高く、ちょっとでも食費を抑えたいから」と喜んでもらえた。しかしながら、材料費の負担や「1人でやっているため、たくさん来ると困る」といった悩みもある。また、「うちでは中学生以下だけが対象だが、理解してもらえずトラブルが起きた」とも明かす。
その一例が“転売”だ。「中学生が『代わりに買いに行く』と言って、10円のたこ焼きを100円で売って90円の利益を得ていた。買った子が『本当なら10回買えたのに』と母親に言って、連絡を受けた。転売したのは毎日来ている子で、『あかん』と正直に注意した」。
開始当初は「1日に何度来てもいい」としていたが、トラブル後は「1日1回」に変えた。「できれば店内で食べてほしいが、店内に中学生がいて、中学生が怖いなどの場合は『持って帰ってもいいが、家で食べて』と言う。少しでも怖い言い方をすると、すぐ泣いてしまうので、できる限りやさしく、こども目線で話すようにしている」と説明する。
山梨県立大学講師の関屋光泰氏は、自身でもこども食堂を運営しているが、同じく転売被害にあったことがあるという。「メーカーから食料品の提供を受けて、配布する“フードパントリー”を行ったら、直後にフリマサイトで転売された。事情があるのかもしれないが、メーカーの厚意や信頼があってのもので困ってしまう」。
■空腹を満たすためだけではない「こども食堂」の価値
ギャルタレントのあおちゃんぺは、「こども食堂は、空腹を満たす場よりも、ひとりぼっちで食べている子が、周囲の大人たちと一緒に食べることに意味がある。食卓を囲んで、学校や友人の話をすることが大事だ」と語る。
加えて、「見えない貧困」ではなく「見せない貧困」の存在を指摘する。「親にプライドがあると、『かわいそう』と見られたくない葛藤もある。貧乏だと思われたくない親を、どうつなげていくかが重要だ」。
モデル・商品プロデューサーの益若つばさは、こども食堂に「貧困のこどもたちに届けたい」といったイメージが付いている現状があると考察する。「貧困の子が『恥ずかしい』と思ったり、親が行かせたくなかったりする話があるなか、たこばの試みは“たこ焼パーティー”のようで素敵だ。階層に関係なく、いろんな人が参加できる」と評価する。
こども食堂には「支え合いの意味合いもある」と関屋氏は説く。「ボランティアを行う側も、子育てやシングルマザーのように、自分自身にも余裕がない人たちは多い。支え合っている趣旨を伝えながらやっていこうとしている」。
■こどもたちの有意義な“たまり場”になれるか
島田さんがこども食堂を始めたのは、「こどもたちがたむろできる場所がない」という危機感からだった。「昔は学校や塾の帰りに来てくれる子が多かったが、今は学校も塾も『ダメだ』と言い、それを真面目に守る」と時代の変化をなぞる。
お笑い芸人のケンドーコバヤシは、まさに「たこ焼屋でたまっていた不良少年」だった。「そういう場で、こどもの社会すべてを学んだ。逆に公的な支援があるところには、顔を出しづらい。子どもたちが集まって、自由にルールを作る場所は楽しい」。
あおちゃんぺは「貧困のループで、お金の稼ぎ方がわからなくて、転売をする子や親もいる」と考える。益若も「周囲の常識が、自分の常識になる子も居るのでは」と問いかける。これらに関屋氏は「貧困の世代間連鎖にならないよう、違う大人とも対話できる場としても、こども食堂には意義がある」と返した。
(『ABEMA Prime』より)
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