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 世界で初めて承認された国産の「レプリコンワクチン」に一部から懸念の声が上がっており、シェディング(伝播)を警戒する声もある。

「レプリコンワクチン」とは何か? 一体真実はどこにあるのか? 科学的根拠を追いかけた。

 9月19日、厚生労働省の分科会は新型コロナの定期接種で使用する「レプリコンワクチン」という新しいタイプのワクチンを承認した。これは、日本の製薬会社Meiji Seika ファルマが製造販売を行う国産のワクチンだ。

 国産のレプリコンワクチンについて、ニューヨークのマウントサイナイ医科大学 山田悠史医師は「従来のmRNAワクチンには『注射しても体内で分解されて効果が短い』という課題があった。レプリコンワクチンはmRNAを増やす機能があるため、いずれは免疫によって壊されてしまうが、効果が長く続くと期待されている」と説明。

 しかしその一方で「免疫機能が低下している患者がこのワクチンを使った場合の影響については追加の研究が必要であり、データの蓄積も欠かせない。例えばmRNAワクチンで見られたような心筋炎がどれくらいの頻度で起こるかなど、これからの市販後調査でデータを集めるプロセスが重要だ」と述べた。

 臨床試験で有効性は確認されているものの、実際に使用されるのは日本が初めて。そしてmRNAが増殖するというワクチンの特徴からSNSでは懸念の声が上がり、「レプリコン」という言葉がXのトレンドに。中にはこのワクチンを接種した人の入店を断る施設や、大学が慎重な判断を求める声明を出すなど、混乱が生じている。

 懸念を示す人が注目するのが「シェディング」だ。

「シェディング」とは、日本語では「伝播」や「暴露」と訳され、人から人に飛沫などを通じてウイルスがうつることを指す。このワクチンに懸念を示す人々の間でシェディングは「ワクチンの成分が接種者の呼気や汗などを通じて他人に取り込まれる」という意味でも使用されている。

 果たして「シェディング」は本当に起きるのか?

 山田医師は「本物のウイルスを使う生ワクチンではシェディングが起こり得るが、レプリコンワクチンはmRNAを増殖させるだけで完全なウイルスを作ることができない。従って、ウイルスを誰かに感染させることは極めて難しい。また、『タンパク質だけで人に伝播できるのでは』という誤情報もあるが、現在のところコロナウイルスワクチンに関する約4万本の論文において、mRNAワクチンでシェディングが起きたという報告はない。つまり、どこかから出てきた科学的根拠に欠く情報だ」と説明した。

 また、mRNAの増殖も動物実験の結果、投与後8日以降で著しく低下し、抗原タンパク質も投与後15日で検出限界量以下に減少しているという。

 一部で不安の声も上がっているレプリコンワクチン。新たな国産ワクチンを導入する必要はあったのか?

 山田医師は「国内で誕生させて国内で使っていけることは大きな強みになる。次のパンデミックに対応するために経験や技術の蓄積が重要になる」と述べた。

 レプリコンワクチンに関する根拠のない懸念の声に対し、ノンフィクションライターの石戸諭氏は「今回のワクチンのように新しいものを取り入れる際には必ず新手の陰謀論めいたものや不安が広がるもの。だからこそ、シェディングなどに対しては『科学的根拠がない』と明確にしておくべきだ。一方でレプリコンワクチンについて、政府、専門家からの説明が不足しているのは気になるところだ。新型コロナウイルスのパンデミック時のように、ワクチンがどんな技術で、どんなメリットがあるのかを入念に伝える必要がある」と指摘した。
(『ABEMAヒルズ』より)

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