石破内閣の発足直前、国会の外では「自民党石破を打倒するぞー!」とのシュプレヒコールが飛び交い、「戦争国会粉砕」と書かれたパネルや横断幕が掲げられていた。憲法改正の反対や反戦を訴える「東京大行進」によるデモだ。
この参加者にいた、ひとりの女性が矢嶋尋氏(25)。暴力革命による共産主義の実現を目指す左派集団「中核派」の流れをくむ、学生組織「全学連」の新しい委員長だ。全学連は1960年代に物議を醸し、国会を取り囲んだ日米安全保障条約の反対デモには、多くの学生が参加し、警官隊と衝突した。
矢嶋氏が中核派の集会に初参加したのは、2020年の秋だった。それから4年、反戦デモなどに参加して、先日、中核派全学連で初の女性委員長に就任した。「日本政府の虐殺への加担を許さないぞ!」と訴える彼女たちを駆り立てるものは何なのか。
「石破政権の動きに反対して、絶対に止めないと。戦後一貫して、私たち学生や労働者のデモの力が、改憲をやりたがってきた自民党を阻み続けてきた。そういう力が、私たちのデモや戦いにはある」(全学連委員長・矢嶋尋氏)
『ABEMA Prime』では、矢嶋氏とともに、理想の国の形や「暴力革命」の是非について考えた。
■中核派全学連とは
全学連とは「全日本学生自治会総連合」の略称で、全国の学生自治会の連合体だ。中核派の全学連は1948年に設立され、反戦、学生の自治・生活・権利のために、現在全国で約100名が活動している。参加者が属する主な大学は、法政・京都・東北・広島・沖縄・福島・富山などだ。
そして中核派とは、正式には「革命的共産主義者同盟全国委員会」と呼び、1963年に革マル派と分裂して発足した。2022年6月現在で約4700人の勢力を持ち、共産主義革命などを目指して、民主主義社会の暴力による破壊を企てていることから、警察庁が警戒する「極左暴力集団」の一つになっている。
矢嶋氏は「全学連は学生運動の大衆組織で、誰でも入れる。中核派の学生組織として『マルクス主義学生同盟』があり、そこの学生が多く参加している。中核派は1958年に『革命的共産主義者同盟』として設立され、今まで共産主義の組織として闘ってきた」と説明する。
■矢嶋尋氏(25)が中核派に参加した経緯「労働者の立場に立って闘うのが中核派」
矢嶋氏は1999年千葉県出身で、2018年に学習院大学へ入学した(現在休学中)。2020年に、音楽の趣味が一緒のSNSフォロワーに誘われて、中核派の集会に初参加した。そこで「この時代に『革命』を目指している人が、こんなにたくさんいるんだ」と、集会の熱量に圧倒されて全学連に参加した。そして今年9月、委員長に就任した。
高校生の頃から政治に興味を持ったが、「日本共産党をはじめとしたリベラル勢力が、民衆のために闘っていない」との不信感を抱いた。2015年の安保法制をめぐっては、国会前の大規模デモも起きたが、「社会を根底から変えていく方向に向かうのではなく、左翼政党が投票を呼びかける運動に流れたことが、衰退の大きな要因だ」と指摘する。
共産党が「野党共闘」路線にかじを切ったことで、「天皇制も自衛隊も容認し、右にすり寄っていると、違和感と不信感を覚えた」。そんな時に中核派と出会い、「労働者階級や民衆の立場で闘い、信頼できると思い活動を始めた」と振り返る。
中核派に対しては「すごくいいイメージがあった」という。「両親は普通の人で、周囲にも左翼はいない。大学入学当時は、天皇が代替わりする時期だったが、日本共産党が立憲民主党などにすり寄るのを見て、『左翼の姿は、これでいいのか』と思った。一貫して天皇制反対を貫いている中核派に信頼を置いた」。
信頼を置いた理由については、「日本共産党は、労働者がストライキを打つことにすら敵対してきた歴史がある。労働者が人間らしく生きる社会を作るために、労働者の立場に立って闘うのが中核派だと思っている」と語る。
委員長として、今後どのようなビジョンを持っているのか。「戦争情勢が厳しく、米軍が先日公開した航海計画でも、『2027年に中国との戦争の可能性に備えて、能力強化を図る』と公然に書かれている。全学連は創立以来、戦争に反対する学生の運動だ。70年安保の沖縄闘争を超えるような巨大デモを、もう一度作り出すことが課題だ」。
■デモの暴力行為は必要?「機動隊は平気で暴力をふるってくる。それに応じた暴力はある」
戦争に反対する一方で、その手段には反発もある。「米軍は300万人を動かせるような軍事力を持っている。それに対抗するには、ひとり一人の民衆自身が力を持つ必要がある。“暴力革命”というと、火炎瓶を投げたり、資本家を殺したりするイメージがあるが、デモの力でも戦争は止められる。」
リザプロ社長の孫辰洋氏は「デモ自体は、権利の主張なので問題ない。物理的ダメージを与える意思があるかが重要だ」として、後者には反対の姿勢を示す。「“戦争反対”には100%同意するが、Black Lives Matter運動のように、一部が過激化することで、支援が割れてしまったケースもある」との見方を示した。
それでもなお、暴力で解決したい理由は、どこにあるのか。矢嶋氏は「権力者にとって都合のいい“民主主義”では、選挙で政権を取ればいいとなるが、実際に権力者に代わって、労働者や民衆の社会を作れるかと言えば、全くそうではない」と指摘。
ミャンマーを例に出し、「社会主義政権が選挙で勝ったが、その後に国軍が出てきて、勝った勢力をつぶした」と紹介し、「チリでも社会主義政権が、軍事クーデターでひっくり返された。そうなると日本でも、私たちのような勢力が選挙で勝っても、最後は資本者階級の暴力で、軍隊と警察が出てきて、ひっくり返されるもではないか」
また、自らの経験から、「機動隊は平気で暴力をふるってくる。それに応じた暴力はあると思っている。ガンガン殴ってくるならば、ヘルメットで身を守ることも必要だ」と主張した。
(『ABEMA Prime』より)
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