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 「でね、ちょっと相談なんですが。その商品がまるっと(200個くらい)在庫として残ってて…これ在庫にしとくのキツイなぁと」

 Xにポストしたのは、徳島県の白滝製麺所の森岡太悟社長。投稿した写真は在庫で残ってしまった200箱分のそうめん。重さにして約500キロという大ピンチを抱えていた。

 しかし、このポストをきっかけに、8月分の売り上げが前年の1年間に相当するくらい伸びたという。

 一体何が起きたのか?

 「決算も近く『この在庫分だけちょっと安くするから皆さん買いませんか?』と軽い気持ちで言ったところ、5分ぐらいで全部ネットの注文が入り、売り切れた。大バズりして、8月は1週間から2週間で1300件ぐらい注文をいただき、大変だったがすごく助かった」(森岡社長、以下同)

 投稿に共感した人たちが在庫のそうめんを買い、在庫がなくなっても他の商品を買う人もいた。ポストをした経緯は、近年の原材料の値上げに伴い、今年の4月に森岡社長が取引先に値上げ交渉をして、受け入れてもらえなかったことに始まる。

 その最初のポストは…

 「取引先に値上げを伝え、うちもしんどいんでお願いしますと下手に出てたら『従業員旅行連れて行くくらいならもうちょい値段下げれるやろ』と言われ『ほなもういいです。買ってくれんでも』と言ってしまい取引先を1つ失う結果に。もうちょい大人にならんと。けど従業員は消耗品でも奴隷でもないんよ。」

 森岡社長は従業員のモチベーションを上げるため、台湾旅行に連れて行ったのだが、その事実が取引先に知れ渡り、「従業員旅行に連れて行けるなら値上げしなくてもいいのでは」と値上げを拒否されたのだという。

 そんな窮状をXのバズりによって救われた白滝製麺。儲け分は従業員にボーナスで還元した。森岡社長も「従業員が忙しくなった分、還元した」と当たり前のように話す。

 今回はXでバズったことで売り上げを伸ばしたが、今後もXを使ってさらに売り上げを伸ばそうという欲はないという。

 「もともと手延べそうめんという伝統的な製法で作るそうめん。自分の目で触れて確かめながら、自然の環境に任せて作る製法が主だ。いいものを作り、お客様に認められて、これを機会に皆さんにそうめんを知っていただき、来年もリピーターになってくれるような商品をずっと作ることに特化していく」

 白滝製麺の大ピンチからの逆転についてダイヤモンド・ライフ副編集長の神庭亮介氏は「Xの文化」が背景にあると説明する。

 「X(旧Twitter)では、商品の誤発注や飲食店のドタキャンなど、ピンチに陥った人をみんなで助けるという出来事が繰り返し起きてきた。ある種の応援消費であり、単にコンビニで商品を買うのとは違って『物語性』がある。応援のために商品を買うことで、自分自身も物語の一部になれるということだ」

 さらに神庭氏は今回のケースについて、「SNSユーザーが共感する素地が整っていた」と分析する。

 「取引先から理不尽な要求を突きつけられたり、下請けいじめを受けたりといった辛い経験のある人は少なくないだろう。従業員を旅行に連れて行くことを咎めるような物言いは、明らかにおかしい。加えて、無味乾燥な投稿ではなく『中の人』顔が見えるような文章で助けを求めたことも、Xユーザーの共感を呼んだ。狙ってできることではなく、あくまで結果論だが、森岡社長の投稿にはバズる要素が詰まっていたと言える」

(『ABEMAヒルズ』より)

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