「戸塚ヨットスクール」戸塚宏校長(84)が出演するYouTubeチャンネル「令和ヨットスクール」が8月に開設され、物議を醸している。戸塚氏は48年前、戸塚ヨットスクールを開校。当初はオリンピアンの養成などを目指していたが、スパルタ指導が不登校や家庭内暴力の更生に効果があると話題になり、親により強制的にスクールに預けられる子どもが増加した。
【映像】1980年代当時の戸塚宏校長&スクールの様子
しかし、厳しい訓練の最中に死亡者や行方不明者を出すなど事件が相次ぎ、問題が表面化。また訓練生に対して行った殴る・蹴るなどの体罰は暴行に他ならないと、戸塚氏は傷害致死罪で実刑判決を受けている。こうした事件を起こしたにも関わらず、YouTubeでは「体罰は善」と語る戸塚氏に批判が殺到しているのだ。
加えて、チャンネルの運営体制も物議を醸している。動画の末尾では「このチャンネルは戸塚先生を支援する2人の青年が運営しています。戸塚校長の意志を後世に残すべくYouTubeを始めました」と説明されている。行き過ぎた指導は「虐待」「ハラスメント」とされる時代で、教育に厳しさはどこまで必要なのか。『ABEMA Prime』では戸塚氏と、支持する若者2人に話を聞いた。
■戸塚宏校長に聞く「体罰は善」の真意
戸塚氏が「体罰は善」と語る理由はどこにあるのか。「体罰そのものはハードで、やり方はソフト。前者は全て善で、後者で事故が起こる。ハードである自動車は悪ではなく、操作などのソフトに違いがあるわけだ。体罰にもうまい・へたがある」と持論を展開。
戸塚ヨットスクールに来るのは、引きこもりや家庭内暴力などの問題を抱えた中高生・大人。「素直に指導を聞かないから体罰を用いるしかない」との考えがある。「言葉でうまく理解できるなら、うちに来るような子どもは出てこない。“教育は強制ではいかん”“自由であるべき”と言ってフリースクールなどを褒めるが、他の所がダメだからうちに来るわけだ。うちに来た生徒がどんな状態だったか。みんな生きていけず、相手にもされない哀れな連中だ」。
そうした背景に“リベラル教育”があると指摘する。「『型にはめるな』『叱るより褒めろ』と言いだしたのがリベラル。数学では『1+1=2』と、型にはめないといけない。そうでないと経済が、日本が崩れる。叱られないと罪の意識もできない」。
その上で、戸塚氏が必要不可欠としているのが「不快感」。「人間は快を求め、不快を避ける。不快感は善で、それがないと行動しない。だから体罰を行うが、恐怖ではダメ。怒りで行えばいい」「虐待はいかん。それはする側のためにやるからだ。体罰は、受ける側のためにやる。体罰を受けて進歩すれば、本人のためになる。体罰を暴力とは思わない」と主張した。
■戸塚ヨットスクールの教えを支持する若者、なぜ?
YouTubeチャンネルを運営しているのは、2000年生まれの24歳である、ロッキーさんと佐藤さんだ。ロッキーさんは「出身が愛知で、小さいころから怒られると『戸塚ヨットスクールに入れるぞ!』というやりとりがあった。事件のことも知っていた」と語る。“昭和的な戸塚論”に感銘を受ける理由には、2人に共通する原体験がある。
佐藤さんは「中学受験の塾はわりと戸塚ヨットスクールみたいな所があり、小学生が朝から晩まで勉強させられた。その経験があったからこそ、しんどい事や理不尽な事があっても『あの時やったから』と乗り越えられた。自力でやっていくのは、理不尽な経験がないと難しい。自分は弱い人間だから逃げてしまう」と説明。
ロッキーさんは「中学の部活動では体罰もあり、ルールなど全体的に厳しい顧問だった。それ以降の人生で理不尽なことへの耐性がつき、自分が進歩した実感がある。『強制力で人間は進歩する』という体罰に関する校長のメッセージには共感できる。かなり過激な部分もあるが、主張が面白く、筋が通っている話もあって、『校長の思想を広く世間に届けたい』とYouTubeで発信しようと思った」という。
では、体罰には賛同するのか。ロッキーさんは「目的として不快感を与えて進歩を促すという点において、それは体罰や言葉、環境だったりすると思う。その中で、体罰だけがフィーチャーされている印象だ。ただ、体罰は善悪の二元論ではなく、シチュエーションによって変わると考えている」と語る。
佐藤さんも「体罰そのものを否定できない」としつつ、「戸塚先生も反論する人も、善悪の二元論で議論しがちだが、そこにはグラデーションがある。地元で『どうしても会話ができない人』を見てきた経験から、あながち全てが悪とは言えない」とした。
Flags Niigata代表の後藤寛勝氏は、「今の若い人は、そばで指導してくれる人から、1から10までの人生哲学を聞いたことがないのでは。表面的な話だけでなく、考えから行動までのプロセスを向き合って教えられる指導者がいない。自分の言葉の定義を持ち、合理的な理屈を語れる人が少ないことが、2人が戸塚氏に傾倒した理由だと感じる」と分析する。
今後、「令和ヨットスクール」チャンネルが目指す先とは。ロッキーさんは「昭和の教育論で育った高齢層は、賛同してくれる人も多い。コメント欄も50〜60代は賛成が多く、そういう人々とのファンコミュニティーを作りたい」。一方で、「若者の周りには耳心地の良い言葉が多い。若者に『こういう意見もある』と届けていきたい」との展望も示した。(『ABEMA Prime』より)
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