首相官邸で岸田文雄首相(左手前)と面会した被爆者4団体の代表ら(右)=東京都千代田区で2023年8月、竹内幹撮影

 8月9日に首相が長崎の被爆者団体と面会して要望を聴く場への「被爆体験者」の出席を長崎市と国が検討していることが市などへの取材で判明した。被爆者4団体は近年の要望で、国が被爆者と認めていない被爆体験者の救済を最優先事項に挙げ、被爆体験者団体も面会を求めてきた。

 首相は毎年、長崎原爆の日に長崎市の平和祈念式典に参列後、厚生労働相、外相と共に被爆者団体と面会している。2023年は台風の接近で首相が長崎訪問を見送り、被爆者4団体の代表が上京して8月30日に首相官邸で面会。4団体は、広島の黒い雨体験者と同様に長崎の被爆体験者にも被爆者健康手帳を交付するよう訴えた。

 被爆体験者団体も首相への面会を求めたが実現しなかった。長崎市は市役所にオンライン傍聴会場を設けたが被爆体験者を案内せず、批判が上がった。

 24年2月27日の衆院予算委員会で長崎1区選出の西岡秀子衆院議員(国民民主党)が「被爆体験者と会って話を聴いてほしい」と質問。武見敬三厚労相が「検討する」と答弁したことを受け、3月に厚労省と市が被爆体験者の出席について検討を始めた。

 市は被爆者4団体に被爆体験者の出席について意向を確認し、4団体はいずれも了承する方針。4団体の一つ、長崎原爆被災者協議会の田中重光会長(83)は取材に「我々は被爆体験者も被爆者だと思っている。大いに賛成」、長崎原爆遺族会の本田魂会長(80)は「反対する理由はない。出席するならオブザーバーではなく、我々と同列でなければ意味はない」と話した。

 県平和運動センター被爆者連絡協議会の川野浩一議長(84)は「被爆体験者の発言の場が必ず与えられなければならない」とし、県被爆者手帳友の会の朝長万左男会長(80)も「市には受け入れると伝えている」とした。被爆体験者でつくる全国被爆体験者協議会の岩永千代子会長(88)は「首相に直接、私たちを広島と同じように扱うよう訴えたい」と話す。【尾形有菜、樋口岳大】

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