大雨により浸水した住宅街の様子=石川県珠洲市飯田町で2024年9月21日正午ごろ(住民提供)

 能登半島地震の復興半ばにある被災地を再び災害が襲った。石川県能登地方では21日、線状降水帯が発生し激しい雨が降り続けた影響で、河川の氾濫や土砂崩れが相次いだ。1人が死亡、少なくとも6人以上が行方・安否不明で、住宅の浸水被害や停電が発生するなど大きな被害が出た。

 気象庁によると、被災地での1時間降水量は輪島市121ミリ、珠洲市84・5ミリと観測史上最大を更新。同庁は午前10時50分、両市と能登町に大雨特別警報を発表、3市町に避難指示が出された。

 県の午後4時現在の発表では、死者1人(珠洲市)、行方不明3人(輪島市、珠洲市、能登町各1人)、重傷2人(能登町)の人的被害があった。また国土交通省によると、輪島市の中屋トンネル付近で、1月の地震で被災した道路の復旧工事中だった作業員4人が土砂崩れの影響で安否不明となり、うち1人の無事が確認された。

 3市町で少なくとも6カ所以上の集落が孤立したほか、断水や河川の氾濫による住宅の床下・床上浸水も多数発生し、輪島、珠洲市では仮設住宅が床上浸水した。さらに、国道249号など18路線37カ所が通行止めとなった。石川県は午前11時18分、自衛隊の派遣を要請した。

 輪島市門前町の門前公民館に開設された避難所には、21日午後2時現在で約20人が身を寄せた。同町では20日深夜ごろから雨が激しくなり、川沿いに仮設住宅の団地が点在する八ケ川(はっかがわ)が氾濫した。

大雨で冠水した石川県輪島市中心部=2024年9月21日正午ごろ(住民提供)

 川に近い同町清水地区の仮設住宅に住む堀岡健さん(42)は、家族5人全員で同公民館へ避難。「午前9時の段階で川の増水を確認して避難した。濁流にかかる橋を渡ったので怖かった」と語った。

 地震以降、同市鳳至町の1次避難所で家族と避難生活を送る会社員の男性(44)は「まさかこんなことになるとは思っていなかった。市内の道はあちこちが土砂崩れで寸断していて、大ダメージを受けている。1月の地震発生直後の状態に逆戻りしたみたいだ」と困惑した様子を見せた。

 石川県珠洲市でも、市中心部を流れる若山川も水位が上昇。市役所近くでは橋のすぐ下まで濁流が迫った。近くに住む住民は「昨夜からものすごい雨で恐ろしかった。家の周りは道路が冠水し、近所では、家の中まで浸水し、避難所へ行った人もいるようだ」と話した。【東栄一、国本ようこ、阿部弘賢】

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