40人のオペレーターが並ぶコールセンター=横浜市内で2024年4月23日午後2時6分、矢野大輝撮影

 神奈川県警は今月から、特殊詐欺への注意を呼びかけるコールセンターのオペレーターを従来の3倍超の40人に大幅増員している。オペレーターが地域住民に直接電話をかけてオレオレ詐欺などに注意喚起。増員から3週間足らずで被害を未然に防ぐなど効果がじわりと出てきている。【矢野大輝】

 「気をつけてください。今、こちらの地域で詐欺がはやっています」。横浜市内のとある雑居ビルの一室。ヘッドセットを付けた40人のオペレーターがパソコンの前に座り、ひっきりなしに電話をかける。県警による「特殊詐欺等被害防止コールセンター」だ。

コールセンターで業務にあたる津金彩子さん(右)と五十嵐珠実さん=横浜市内で2024年4月23日午後2時11分、矢野大輝撮影

 県警は、詐欺の疑いがある電話を受けた住民からの通報を詳細に分析。2010年から、不審な電話が集中する地域を選定し、オペレーターが犯罪グループに先回りして個人宅や金融機関へ電話で警戒を促す業務を民間委託している。

 県警によると、直近5年の県内の特殊詐欺被害は減少傾向だったが、22年に件数・被害額ともに増加に転じた。23年は2024件と前年より66件減ったものの被害額は約45億7000万円と前年比で約1億8200万円増えている。

 最近は、著名人の名前をかたるなどしたSNSによる詐欺など手口も多様化。収まる兆しの見えない被害に、県警はコールセンターの機能強化を決めた。手狭だった建物から新たなビルに移り、今月以降は13人だったオペレーターを40人に増やした。

 増員の効果は早くも表れている。昨年は約50万件の架電をきっかけに詐欺被害を2件未然に防いだ。一方、今月の増員後は9、17日と立て続けに防止し、昨年1年間の件数にすでに並んでいる。

 県警は23日、今月に被害を防止したオペレーターの津金彩子さん(53)▽伊藤彩花さん(25)▽五十嵐珠実さん(55)――の3人に感謝状を贈呈した。3人の電話相手は「区役所から『医療費の払い戻しがある』と言われて預金額を教えた」などと打ち明けたといい、詐欺の手口だとすぐに判断できたという。

 津金さんは「びっくりした。警察官が電話相手の所に到着するまでの約20分間話し続けた」と説明。五十嵐さんは「相手を安心させるよう心がけた」と振り返った。犯罪抑止対策室の臼井謙室長は「警察だけではやりきれない注意喚起について、今後も官民の力を合わせて取り組んでいきたい」と話した。

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