公務の現場で非正規で働く「会計年度任用職員」の再任用に関し、職員を公募せずに再任用する場合の任用回数の上限を撤廃または対応を検討とした自治体が、東京都内で約7割に上ったことが、民間団体の調査で明らかになった。【東海林智】
同職員は1年限りの任用であることから、雇用の不安定さが指摘されていた。公募を経ずに再任用する場合の任用回数の上限撤廃の動きに、非正規公務員から歓迎の声が上がっている。
調査は、非正規公務員の問題に取り組む市民グループや労組でつくる「なくそう!官製ワーキングプア東京集会」の実行委員会が実施。首都圏の106自治体に情報公開請求するなどした。
国の機関で働く非正規公務員には、人事院の設けた公募を経ずに再任用される際の任用回数は上限2回との努力義務があった。また、自治体の非正規を管轄する総務省は、運用マニュアルで同様の上限回数を記していた。
それが今年6月に人事院が努力義務を廃止し、総務省もマニュアルから上限回数を削除した。これらの動きを受け、実行委員会が自治体の現状把握のために調査した。
それによると、都内では文京区や八王子市など3区2市がそもそも再任用の回数制限を設けておらず、調布市と西東京市は新たに廃止を決めた。
制限のある千代田区(再任用は4回)や港区(同)など14区4市は廃止を検討中。江東区(同)や国分寺市(同)など3区6市は今後検討を予定。約7割が、廃止あるいは検討を予定していた。
これに対し、武蔵野市(同)や国立市(同)など5市は検討を予定しておらず、新宿区(同)など3区1市が「回答を差し控える」とした。「その他」が1市、5市は回答しなかったという。
相談業務で働く都内の女性は、同じ仕事を10年以上続けてきた。だが、制度が始まって以来、仕事を続けられるのか毎年不安を感じていた。制限見直しの動きに女性は「10年も問題なく仕事をしているのだから、能力、力量は分かっているはずなのに、公募にかけられる不安はいつもあった。上限の見直しは安心して働くための第一歩だ」と話した。
調査を行ったグループの一つの「はむねっと」共同代表、瀬山紀子さんは「公務の現場で有期雇用がいいように使われている。上限撤廃を第一歩に、安定雇用や同一労働・同一賃金を求めていきたい」と話している。
非正規職員の再任用回数の制限を巡る都内自治体の動き
※カッコ内の数字は、公募を経ずに更新した場合の再任用の上限回数
<制限の廃止を決定>
調布市(4)西東京市(4)
<もともと制限なし>
文京区、世田谷区、板橋区、八王子市、狛江市
<現在検討中>
千代田区(4)中央区(4)港区(4)台東区(4)墨田区(4~7)目黒区(5~9)中野区(0~4)杉並区(5)豊島区(4)北区(4)荒川区(4)足立区(4)葛飾区(4)江戸川区(4)府中市(4)福生市(4)稲城市(4)あきる野市(4)
<今後検討予定>
江東区(4)品川区(0)練馬区(4)昭島市(4)小平市(4)国分寺市(4)東久留米市(4)羽村市(4)清瀬市(4)
<検討予定なし>
武蔵野市(4)三鷹市(4)東村山市(4)国立市(4)武蔵村山市(3、5)
<その他>
立川市(4)
<回答を控える>
新宿区(4)大田区(4)渋谷区(4)東大和市(4)
<回答未着>
青梅市、町田市、小金井市、日野市、多摩市
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