岩手県は18日、災害時に開設する避難所で住民の受け付けなどに無料通信アプリ「LINE(ライン)」とマイナンバーカードを活用する実証実験をした。沿岸の久慈市で30人余りを対象に、受付用紙への自書と所要時間を比較した。実験は1人当たり10秒前後だったのに対し、自書は2~3分かかり、大幅な短縮効果があった。
避難所での受け付けとその後の避難者名簿作成は、安否確認や生活支援物資の配布に必要な作業。しかし、住民が受付用紙の記入に時間を要したり記入漏れがあったりする他、避難者数など情報の集約に自治体職員による入力が必要で、スピードアップや精度向上が課題となっている。
岩手県はスマートフォン使用者の多くが利用するラインと住所、氏名などが記されたマイナンバーカードに着目。県公式ラインアカウントからマイナカードで氏名などを事前登録してもらい、避難所で住民にQRコードを示してもらうことで受け付けを済ませ、瞬時に避難者名簿に載せられる方法を考案した。ラインとマイナカードを避難者対応に利用するのは珍しいという。
久慈市は国が4年前に公表した日本海溝・千島海溝地震による津波浸水想定で4400人が犠牲になるとされ、岩手県が実証実験への協力を打診した。公民館で実施された実験には、周辺住民と岩手県立大生の計34人が参加。住民らが表示させたQRコードを受付係の市職員がスマホで読み取る方式と、受付用紙への記入の二つで所要時間を比較した。
実証実験に参加した久慈市の工藤健二・防災危機管理課長は「避難者を迅速に把握できるので心強い」と語った。取材に応じた大畑光子さん(75)は「(実験に)効果があることはわかったが、高齢者はデジタルに二の足を踏む人が多いので十分な研修が必要ではないか」と指摘した。
岩手県は11月にも実証実験をしたうえで、市町村での活用を探りたい考え。【奥田伸一】
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