ある地区自治連合会の2023年度の研修旅行案内。16人が参加し、地区自治連の会計から約74万円が支出された
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 奈良県大和郡山市の自治会への補助金の一部が、末端の自治会まで下りず、地区自治連合会で使われているケースがあることが関係者への取材で判明した。親睦目的の飲食や旅行への支出も目立つ。補助金の内容を市がホームページなどに載せておらず、自治会員の多くがその存在を知らない中で、地区自治連合会幹部らが使っている形で、疑問視する住民の声が聞かれる。

 自治会への補助金は年計約3000万円で、内訳は市自治会等活動推進事業補助金約800万円▽市広報紙などの文書等配布委託料約1800万円▽県広報誌配布手数料約400万円。いずれも世帯数が多いほど増える。

 一部が末端の自治会まで下りていなかったのは活動推進事業補助金。13地区自治連合会のうち、地域のつながりが歴史的に強く、地域全体のイベント等もある6地区は地区自治連の活動に使っていた。補助金の交付要綱は「住民自治意識に基づく住みよい地域社会づくりのため」などと抽象的に趣旨を説明しているだけで、事実上、自由に使える。

 このうち、自治会組織が70を超えて最も多い地区自治連の2023年度の決算書などによると、この補助金は約166万円で、繰越金や自治会からの分担金などを除いた収入の9割近くを占める。

 しかし、決算書の収入には「市報償費」とだけ書かれ、補助金名は書かれていない。支出で最も多いのは研修旅行費約74万円で、懇親会(忘年会)費等に約26万円使っている。関係者によると、旅行は23年7月に1泊2日で北陸に出向いた。参加者は16人で、観光地以外は立ち寄っていないという。単純計算で1人約4万6500円が地区自治連の会計から支出された形だ。県内では約10年前、県市議長会の1泊の県外視察で、宿泊・宴会費(旅費は含まず)に1人約4万4000円を公費から支出していたことが批判を浴び、通常の視察並みの宿泊料1万4800円、日当3000円に見直したことがある。

 研修旅行についてこの地区自治連の会長(84)は「この地区は新旧さまざまな人が暮らし、自治会数も多い。飲食を共にすることは人間関係を築く上でとても重要。旅行の後は意思疎通がしやすく、活動がスムーズになる。とても大切な事業だ」と意義を語る。旅行費用の妥当性や飲食代を含む支出に関しては「会計監査を受け、予算、決算は地区自治連の総会で承認されている」と正当性を強調。「地区自治連の決算などを各自治会長がどう会員に伝えるかは、各会長が決めることだ」とも話す。

ある地区自治連合会の2023年度の決算書の一部。研修旅行費が最も高額だ
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 23年の研修旅行に参加した70代の自治会長は「この補助金については知らなかった。(地区自治連が会計を)うまくやりくりしていると思っていた。私自身は他の会長との交流自体が有意義な『研修』だった」と語る。

 一方、自治会長を1年経験した60代の男性は「1年交代の自治会長になり、初めて総会に出て、決算書の『報償費』が市の補助金だと分かるはずもない。補助金が地区自治連にとどまり、自治会は平等に世帯数分の補助を受けられていない。市はなぜ、高額な旅行や飲食を含む金の使い方を問題視しないのか」と憤る。

 別のある地区自治連は23年度、外部の各種団体の代表者を含む親睦旅行に約35万円、年末懇話会と各種団体新年懇談会に計約70万円を支出した。この地区の80代の地区自治連会長によると、各種団体の参加者分は負担していないが、忘年会や新年会の飲食に1人1万円程度を地区自治連の会計から出したという。決算書の収入欄には「地区総会費」「地区協議会費」と書かれ、市の補助金と明示されておらず、税金由来であると一見するだけでは分からない。

 この会長は「今年度から親睦旅行はやめた」と説明。「これまで問題だとは思わなかったが、時代の要請もあり、皆さんと協議しながら見直しを進めていきたい」と話す。

 大和郡山市の自治会への補助金を巡っては、補助金が地区自治連に現金で手渡されていることが6月の市議会で広く知られた。現金手渡しが一部で補助金の「裏金」化につながり、不透明な会計処理の温床になっていることが判明。補助金の趣旨や内容などが市の自治会運営手引きやホームページに載っていないことも明らかになった。

 市と市自治連合会は12月の次回支払いから、手渡しはやめ、原則振り込みにすることで合意している。【熊谷仁志】

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