自殺した男性の妻のコメントを読み上げる代理人弁護士ら=京都市中京区で2024年4月23日午後1時1分、水谷怜央那撮影

 新型コロナウイルスの検体を医療機関から回収する業務に就いていた男性が自殺したのは、長時間労働が原因だとして、男性の妻が23日、勤務先の臨床検査会社(京都府)などに計約1億1200万円の損害賠償を求める訴訟を京都地裁に起こした。妻が弁護士を通じて発表したコメントは以下の通り。

 夫は、仕事に誇りをもって働いていました。2020年8月17日、いつものように出勤したものと思っていましたが、会社を無断欠勤していたことがわかり、夜になって捜索願(行方不明者届)を出しました。翌日午前3時頃(ごろ)、警察から夫が自死していたと連絡を受けました。連絡を受けた時は、とても信じられず何かの間違いではないかという気持ちと不安でいっぱいでした。実際に夫の姿をみてショックと悲しみで頭が真っ白になりました。

 夫は、2018年8月に日本医学臨床検査研究所に転職してから、帰りは早くても午後11時、遅いと深夜2時くらいでした。休みの日や帰宅後にも会社のパソコンで仕事をしていたこともあり、会社の携帯に電話がかかってくることもありました。あまり愚痴を言うタイプではありませんでしたが、とても頑張って働いていたと思います。

 2020年3月にコロナが流行し、日本医学臨床検査研究所がPCR検査を請け負うようになってからも、夫は忙(せわ)しなく働いていました。自宅に帰れず、車で仮眠をとってそのまま翌日の仕事に出たこともありました。夫が自死したと聞いて、私は、仕事が夫の命を奪ったのだと思いました。

 日本医学臨床検査研究所では2017年にも40代の男性が過重労働やパワハラを苦に自死したとして京都地裁で裁判になっています。わずか3年の間に2人も自死者が出ていることにも驚きましたし、人が亡くなって裁判にまでなったのに社員の働き過ぎや精神面での健康・安全衛生について配慮する労務管理をしなかったことがわかって、とても残念です。

 私は、関係者にはきちんと責任をとってもらいたいし、夫に謝ってほしいと思っています。

相談窓口

・#いのちSOS

 「生きることに疲れた」などの思いを専門の相談員が受け止め、一緒に支援策を考えます。

 0120・061・338=フリーダイヤル。月・木、金曜は24時間。火・水・土・日曜は午前6時~翌午前0時

・いのちの電話

 さまざまな困難に直面し、自殺を考えている人のための相談窓口です。研修を受けたボランティアが対応します。

 0570・783・556=ナビダイヤル。午前10時~午後10時。

 0120・783・556=フリーダイヤル。午後4時~同9時。毎月10日は午前8時~11日午前8時、IP電話は03-6634-7830(有料)まで。

・まもろうよ こころ(https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/soudan/sns/【https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/soudan/sns/】)

 さまざまな悩みについて、LINEやチャットで相談を受けている団体を紹介する厚生労働省のサイトです。年齢や性別を問わず、自分に合った団体を探せます。

・こころの悩みSOS(https://mainichi.jp/shakai/sos/【https://mainichi.jp/shakai/sos/】)

 悩みを抱えた当事者や支援者への情報のほか、相談機関を紹介した毎日新聞の特設ページです。

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