8月、初めて発表された「南海トラフ地震臨時情報」。改めて、巨大地震に備えることの大切さを痛感された方も多いのではないでしょうか。シリーズで考える防災。今回は『もし地震の1日前に戻れるとしたら、何をしますか?』
サタデーステーションは、能登半島地震で被災された3人を取材。被災者の体験から見えてきた“とるべき行動”とは?(9月14日OAサタデーステーション)

■“津波”被災者の教訓「避難ルートと所要時間の確認を」

地震発生時、自宅で夫と2人でいた石塚さん。
自宅は海からおよそ50メートル。避難所は歩いておよそ10分の場所にあります。

津波被害にあった石塚愛子さん(47)
「揺れが大きくて長くて止まらなかった。向かいの自宅から80代70代50代の方が歩いて海方面に向かっていたので自宅に上がってもらった」

高齢の隣人ら3人と一緒に避難所へ行くことを考えたといいますが、道が寸断されたり、橋が隆起したりという現状で、道が通れなくなっていました。
使おうと思っていた自転車は物置が散乱し取り出せず。避難所への最短ルートだった橋も今にも崩れそうなほど隆起。刻一刻と津波が迫る中、避難所まで何分で着けるのか。安全に行けるルートはあるのか。命が助かる判断を瞬時にしなくてはいけない場面で、迷うことが多かったといいます。
そして、地震発生からおよそ30分、津波が押し寄せます。最終的に自宅の2階に垂直避難し命は助かりましたが、自宅に取り残されることになりました。

「もし地震の1日前に戻れるなら」津波に襲われた石塚さんが強く感じたのは「複数の避難ルートの確認」だといいます。

石塚さんの地区ではハザードマップや避難所までのルートを歩くなどの避難訓練が実施されていたといいますが、石塚さんは仕事の都合上、訓練に参加できていなかったそうです。避難ルートを確認していれば、命の選択を迫られた時でも、瞬時に最善の判断ができたのではと感じています。

津波被害にあった石塚愛子さん(47)
「このエリアでは倒壊家屋が多すぎて道を全部がれきの上を歩くしか今回は避難所へは行けなかったというふうなことも伺ってますし、訓練があったおかげで通常よりもスムーズに高台に逃げることができたという方々もいらっしゃるので。危機迫る状況の中の行動を考えるということはすごく大事かなと思いますね」

■“倒壊”被災者の教訓「地震は複数回。最初の揺れで避難を」

能登地震での建物被害はおよそ16万棟。南海トラフ巨大地震では建物被害想定が238万6000棟(全壊・焼失含む)にもなっています。
能登地震発生時、1人で自宅にいた巽さん。
最初の揺れで避難準備をしますが、そのおよそ3分後、もう1度大きな揺れに襲われました。そして、自宅は倒壊。生き埋めとなりました。生き埋めになることおよそ15時間。ようやく兄らの手によって救出されました。

「もし地震の1日前に戻れるなら」巽さんは「1回目の揺れの後すぐに家を出ること」が重要だといいます。

倒壊の被害にあった巽通敏さん(52)
「まさかの2回目の揺れが来たんですね。2回目来ると考えんと、どこかに行こうと思いましたけど考えが甘かったですね。まさか潰れないだろうと思って家にいたらダメ。とにかく外に出ること。防災リュックに必要なものをまとめておいて」

大きな揺れは何回も来る可能性があるため油断せず、まずは一刻も早く外に出る。防災グッズで大切なのは、ひとまとめにして、とりやすい場所に置くこと。
さらに、生き延びるために不可欠だったのが「スマートフォン」。

倒壊の被害にあった巽通敏さん(52)
「生き埋めの時にスマホのスピーカーで伝えました。連絡がついたことで少し希望が湧きますから。常日頃持っていることが大事」

スマートフォンは家の中でも常に近くに置いておく。実は生き埋めになった時、たまたまスマートフォンがポケットに入っていたことで、兄に救助を求めることができました。

■“火災”被災者の教訓「すぐ逃げるための3つの準備」

輪島市では約300棟が焼失。倒壊や火災などによる死者は150人にのぼります。(13日時点)
火災で創業80年の饅頭店兼自宅を失った塚本さん。

火災被害にあった塚本民子さん(73)
「火災のかの字もゼロやった。まさかのことが起きる。玄関の横に食器棚があったから全部出て。皿が飛んできて骨の先まで3本カットして切れた」

出入口を塞ぐ家具、割れた食器で手を大けがするなど、避難に手間取ってしまったといいます。

「もし地震の1日前に戻れるなら」大規模火災を経験した塚本さんが必要だと感じたのは「すぐ逃げるための3つの準備」。

準備の1つ目が巨大地震を想定した「家具の固定」です。

火災被害にあった塚本民子さん(73)
「(タンスに)チェーンつけても倒れた。素人考えじゃなくて、ポールつけとけばあんなもんじゃない。(家具の耐震対策は)工事現場の人に大工さんにどうしたら倒れないか聞いて対策したほうがいいと思います」

2つ目が、安全に避難するための「靴」。
倒れた家具などで入り口がふさがり、玄関に靴を取りに行けないほどの状況の中、防災リュックの中に靴を入れていたことで、素早く安全な避難ができたといいます。

そして3つ目の準備が、揺れで自動的に落ちる「感震ブレーカーの設置」です。
輪島で起きた火災の出火原因は、電気系統の可能性があると指摘されています。

火災被害にあった塚本民子さん(73)
「みんながブレーカーを落としていけば、だいぶ火事の発生を防げると思うんです。やっぱり感震ブレーカーです。今からでも感震ブレーカーを設置してください」

取材ディレクター:白鳥宏亮・矢谷一樹・井本友理

▶【能登半島地震 被害状況マップ】災害をとらえた映像を地図上に表示

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