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 都市伝説や陰謀論など、科学的根拠の乏しい言説に、もし家族がハマってしまったら…。3人家族のまさきさん(仮名)は、妻がいわゆる「自然派」という考えにハマり、子育てに影響が出ているとXに投稿して、話題を集めた。

【映像】頭を冷やす?「キャベツ帽子」

 「自然派」とは、主に健康のために天然素材の食品や調味料にこだわり、処方薬やワクチンを避け、科学的に証明されていない自然療法を取り入れたりする考え方のことを指す。信じている人自身の選択ならば自由だが、家族なども巻き込んでしまうケースもあるという。まさきさんがコロナワクチン接種を勧めても、妻も子どもも受けなかった。

 「会話はしたが、互いに考えが違うから平行線で、どうすればいいのか本気でわからない」と、理屈がぶつかり合う中、まさきさんは妻の病院を受診しない、予防接種をしないという考えに対し「もし大きな病気になったら」と悩みを抱えている。『ABEMA Prime』では、かつて行き過ぎた“自然派育児”を行っていた当事者に話を聞いた。

■「こんにゃく湿布」「キャベツ帽子」根拠の乏しい“自然派”療法にハマる人

 海外出張が多い夫と、小学校低学年の息子と暮らす40代のめぐみさん(仮名)は、かつて“自然派育児”の沼にハマっていたと話す。結婚前に、不規則な食生活を改善するため「健康志向」になったことから、本や教室、セミナーに通い、“ゆる自然派”となった。結婚と出産を経て、SNSを開設し、自然派の情報や仲間集めに奮闘した結果、“ガチ勢”へと転身。体調不良でも基本的には病院に行かせず民間療法で対処。紙おむつではなく布おむつを利用し、スナック菓子は与えないことを育児方針とした。

 実践していた民間療法は、熱が出たらキャベツを頭に乗せる、具合が悪い時には「レメディ」を飲ませるといったもの。レメディとは、植物や動物組織、鉱物などを何度も希釈・浸透させた水を砂糖玉に染み込ませたものだ。効き目について、日本医師会や日本医学会は「科学的な根拠がない」と警鐘を鳴らしている。

 めぐみさんは「子どもがせきを出した時に、レメディを飲ませたら、たまたまだと思うが止まった」と振り返る。そこから「『薬ではなく、こういうのが効くのか』と、洗脳ではないが、ガチでハマってしまった」そうだ。

 具合が悪くなると、血流を良くする効果を生み出すと信じて「こんにゃくをタオルに包み、体に置く」など、根拠の乏しい自然療法も行っていた。しかし今では、「普通に一般的に売っているものとかをもっと信じて、気楽にやればいいと思う」と語る。

■子どもに予防接種も受けさせず母子手帳が白紙状態に

 自然派に深くハマってしまうきっかけとしては、妊娠・出産時に「精神的な不安定さ」や「母親として責任感」などがある。「妊娠出産は自然なほうがいい」という考えも根強く、出産後も「身近なママ友からの受け売り」や「SNSで出回るガセ情報」をうのみにするケースがあるという。

 自然派志向だった当時は、「基本的に病院へは行かず、予防接種も受けさせていなかった」ため、母子手帳は白紙状態だった。「余計なものは体に入れたくなかった。いま振り返ると必要だとわかるが、当時はダメだと思い込んでいた。子どもが幸い大病しなかったので良かっただけの話だ」。

 番組が取材した、自然派にハマってしまい後悔したAさんも、「ある日、子どもが熱を出した時、病院から処方されたタミフルが“怖い”と感じ、飲ませなかった。結果、気管支炎になり、長引かせてしまったのが子どもに申し訳なかった」と振り返る。

■インフルエンサー、メディアをきっかけに自然派にハマる人々

 ライターの山田ノジル氏は、科学的な根拠が乏しい事象にハマる人たちを取材してきた経験から、共通点として「不安」を挙げる。「健康や環境、育児・出産の不安を『自然でないといけない』と商業的にあおる。有名人やインフルエンサーが、“自然な暮らし”を発信して、それをメディアがもてはやし、憧れた人がハマることも多い」。

 さらに、「自然派には優性思想もあり、弱いものは淘汰されるといった考えになると、家庭だけでなく、社会のバランスがおかしくなっていく」と危険性を指摘。また、最近見られるオーガニック給食の推進運動についても、オーガニック食材そのものに問題はないものの「そこから『普通の食材には農薬が残っていて、発達障害や自閉症の原因になる』と主張し、オーガニック給食を食べなければならないと必要性を説く悪質なビジネスに繋がっている例もある」と説明する。

■コミュニティとの過剰な関係にも要注意「宗教の問題とすごく似ている」

 ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は、「効果がないと完全に証明できず、逆に言えば、副作用もない。神社のお守りも、(科学的に証明された)効果はないが、人はそれを信じる」との持論を述べる。

 政治学者の岩田温氏は「宗教の問題と似ている」と指摘し、「ある新興宗教は、輸血をしてはいけない。外科医からすれば、輸血するしか生きられないが、“信教の自由”も否定できない」と例示する。

 カンニング竹山も「縄文時代から江戸時代まで、人間は自然派で生きるしかなかったが、平均寿命は短かった。現代医学で寿命が延びたことを、いかに自然派の人は説明するのだろうと、いつも思っている」と語っていた。
(『ABEMA Prime』より)

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