しまじろう(左)と妹のはなちゃん=ベネッセコーポレーション提供

 乳幼児向けの通信教育「こどもちゃれんじ」では教材に登場するキャラクター「しまじろう」が子どもたちに大人気。受講する子どもの年齢に合わせて、しまじろうも成長していくのが特徴だ。子どもが2、3歳になると、妹「はなちゃん」が誕生し、教材として人形も届けられる。2人目を持たない子育て家庭も多くなる中、どんな狙いで妹を届け続けているのか。こどもちゃれんじの編集部に聞いた。

 しまじろうは1988年に生まれたキャラクターで、明るくて好奇心旺盛な虎の男の子。絵本や映像教材でさまざまなことにチャレンジして成長する姿に子どもたちは自分を投影できる。

 最初はお父さんとお母さんの3人暮らしだが、子どもが1、2歳で受講する「ぷち講座」3月号の絵本で、お母さんが妊娠し、妹が生まれることが紹介される。そして、2、3歳向けの「ぽけっと講座」に進級すると、6月号で、妹のはなちゃんの人形が届き、着替えや食事などのお世話遊びができる。

 こどもちゃれんじを展開するベネッセコーポレーション(本社・岡山市)によると、はなちゃんは93年に登場。教材として人形を届けるようになったのは2007年からだ。お世話遊びを通じて優しい気持ちや思いやりを育むことが狙いだという。

ストーリーで感情移入

しまじろうの妹「はなちゃん」の人形=ベネッセコーポレーション提供

 1~3歳の講座の編集長を務める中川華さんは一人っ子が増えていることを踏まえて、「いろいろな家庭環境がある中で、しまじろうの家庭で妹を誕生させていいか07年当初から議論してきた」と明かす。議論の結果、幼い子どもたちが思いやりの心を育むには、しまじろうとはなちゃんの温かい関係性を示すことが効果的だと考え、届け続けているという。「幼児はストーリー性があることでより感情移入ができる。皆が大好きなしまじろうが大切にしている妹に優しくすることで、思いやりの心を育める」と力を込める。

多様な家族像

妹のはなちゃん(左)をお世話するしまじろう(こどもちゃれんじ ぷち2024年3月号より)=ベネッセコーポレーション提供

 ただし、家族像の押しつけにならないように配慮は欠かさない。

 「2人目のお子さんを出産しない方もいらっしゃるため、編集部で議論を重ねましたが、心が豊かに成長するこの時期に、はなちゃんの存在によってよりわかりやすく思いやりの心をお子さんに伝えることができるのではないかと考えました」

 お母さんがはなちゃんを妊娠したことを伝える絵本教材ではこんな注意書きを載せ、丁寧に意図を伝えるようにしている。

 また、しまじろうの友達には一人っ子のウサギ「みみりん」や、三つ子の鳥の「とりっぴい」、お父さんとは一緒に暮らしていない猫の「にゃっきい」もいる。さまざまな家族像をキャラクターの世界の中で示すようにしている。

 はなちゃんはしまじろうに負けぬ人気があり、保護者からも「妹や弟はいないが、はなちゃんがいることで小さい子に優しくできるようになった」などと好意的に受け止める声が多数寄せられているという。中川さんは「しまじろうがはなちゃんをかわいがり、はなちゃんもしまじろうが大好きという信頼関係を見てもらうことで、受講するお子さんたちも小さい子に優しく、頼られる存在になりたいと思ってもらえればと願っている」と話している。【野口由紀】

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