黒ずくめの人物たちが太陽光発電所で、銅線を盗む様子を捉えた防犯カメラの映像です。銅の価格が高騰している状況で各地で銅の窃盗が相次ぎ、去年は全国の太陽光発電所で7200件の盗難被害が発生しています。

■350万円で販売…銅の馬が盗まれる

 電気工事会社の倉庫に設置された防犯カメラの映像。午前3時に現れた軽トラック。降りてきた2人が入口へ向かうと、ノコギリのようなもので南京錠を切断し、倉庫の中へ侵入します。

 狙われたのは、倉庫内にある大量の「銅線」です。軽トラックの積荷には、大量の銅線が積まれていました。

 この日、およそ500キログラムの銅線が一夜にして盗まれました。

 銅器づくりの国内シェア9割以上を占める“銅器のまち”富山県高岡市でも、銅の窃盗が立て続けに起きています。

高岡銅器協同組合 宮津健志理事長
「(銅の)馬が盗まれました。ここに置いてあったんですけど…」

 盗まれたのは、およそ350万円で販売されている馬の銅像。さらに、公園に設置された銅像が盗まれるなど、5カ月連続で銅の盗難被害が発生。被害総額はおよそ1300万円に上ります。

 警察庁によると、全国の金属の盗難被害は2020年と比べ、去年は3倍に急増。中でも目立っているのが、銅を含んだ金属の盗難です。

 先月、京都では線路の部品として使われる銅線の束が盗まれました。今月には山形の太陽光発電所で銅線およそ4.5キロメートルが盗まれました。

 全国各地で被害が発生するなか、近年、特に狙われているのが太陽光発電所。広大な敷地に並ぶ太陽光パネルの送電用に使われる大量の銅線。それが今、標的となっているのです。

■被害額は1億円…大型工具で切断

銅線の盗難被害に遭った管理者
「我々ですと、だいたい50カ所くらい。今のところ、今年に入って7カ所。睡眠時間が削られて、気が休まらないですね」

 10年以上前から、千葉県などで太陽光発電所を管理する男性。去年9月に初めて銅線の盗難に遭い、その後、立て続けに4回の被害に遭っています。

 その犯行の一部始終が、カメラに捉えられていました。

 早朝の太陽光発電所。数人の人物が堂々と施設内を歩き回り物色しています。別のカメラには1人が“大型のハサミ”のような工具を持ち、地面にある銅線を切る様子も映っています。

 黒ずくめの人物が2人現れると、小走りで銅線を引っ張り出します。はじめは1人で肩に背負い運ぼうとしますが、ほとんど動かすことができず、かろうじて2人がかりで担いで運んでいきます。

 その後、仲間が現れ、4人で銅線を運ぶ姿も…。工具を持った人物が再び物色をはじめると、別の銅線を慣れた手つきで切断し、運んでいきます。もともと何も置いてなかった地面には、どんどん銅線の束が置かれていきます。

 一度は慌ててフェンスを乗り越え出ていくも、15分ほどで車に乗って戻ってくる犯行グループ。車の後ろのドアを開けると、切断した大量の銅線を載せていきます。

 侵入しておよそ1時間、大量の銅線を積み込むと、何事もなかったかのように車で走り去りました。

 4回の銅の盗難被害に遭った発電所を訪ねました。

 あるはずの銅線がほとんど盗まれ、空っぽに。その盗まれた銅線の長さはなんと1500メートル。その被害額は、4回の窃盗で被害額は1億円に上るといいます。

被害に遭った発電所 管理者
「盗難1回当たりですと、大体(被害額は)2000万円〜3000万円くらい」
「(Q.2000万円〜3000万円、1回で?)そうですね」
「(Q.トータルで)1億円は、かかっているかもしれない」

 千葉県では今年に入り、太陽光発電所での銅線窃盗事件がおよそ200件発生。なぜ、太陽光発電所が狙われているのでしょうか?

 この施設は道路や住宅もなく、周りはうっそうとした林に囲まれています。太陽光発電所の多くは住宅街から離れた場所にあり、人目につかないため、狙われやすいといいます。

■まるで忍者…黒マスクで窃盗

 隣の茨城県でも「太陽光発電所」の被害は深刻です。茨城県などで複数の発電所を管理している関根さんは、次のように話します。

太陽光発電所 管理者 株式会社トータルインプローブ 関根利仁さん
「この金網を切られて侵入されました」

 ひと気のない午前5時、何者かがフェンスに穴を開け、施設内に侵入。侵入者が物色していたその時、警報が響きわたり、慌てて逃げました。この時は銅線を盗まれることはなかったものの、フェンスやケーブルを切断される被害に。さらに、取材中にも新たな被害に遭いました。

関根さん
「『発電が止まってる』という連絡を受けた」

 急いで、その発電所に向かいました。

関根さん
「やられてますね。やられてますね」

 黒いパイプが切断されていました。被害はそれだけでなく、至る所で銅線が切断され、持ち去られていました。

関根さん
「忘れ物があります」

 運び忘れたのか、長い「銅線」が地面に無造作に残されていました。

関根さん
「恐らく、切って持っていく途中で落としてしまって、忘れたのでは」

 近くの発電所を確認して回ると…。

関根さん
「あれは多分、犯人が落としていったモノ」

 銅線などを切断する工具が落ちていました。被害額は300万円に上るといいます。

 銅の盗難は茨城県内にある別の太陽光発電所でも。深夜の真っ暗な発電所から切断した銅線を引っ張り出す姿が…。別の日には、地を這うような姿勢で施設内に侵入。カメラに気付かず、目の前を横切り黒いマスク姿があらわになっていました。

 この施設では、去年11月に狙われて以降、5回にわたり被害に遭い、その被害額はおよそ2700万円。さらに、銅線を盗まれた太陽光パネルは稼働できないため、月に150万円ほどの損失も生じるといいます。

 この施設のセキュリティを担当する会社も、相次ぐ銅線の窃盗事件に苦労が絶えません。

株式会社PSD 代表取締役 大山伸善さん
「今の最終の対策として、ここは夜間、球場のように明るくなっています。まだまだお金をかけようによっては、やれることはあると思いますが、費用対効果という面もあるので。太陽光発電のオーナーさんが悲鳴を上げている状態」

 茨城県は4年連続、金属の盗難が全国ワースト1位。県内で1月に起きた金属窃盗事件は313件。そのうち太陽光発電施設が211件と、およそ7割を占めています。これは去年の同じ時期のおよそ4倍にあたる数字です。

(「羽鳥慎一 モーニングショー」2024年4月23日放送分より)

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