無罪が確定した男性のDNA型などを抹消すべきだとした名古屋高裁判決について、上告しない方針を明らかにした警察庁の露木康浩長官=東京都千代田区で2024年9月12日午前、山崎征克撮影

 警察庁の露木康浩長官は12日の記者会見で「(DNA型などのデータを)抹消する判断に至ったことについては、今後の教訓としてまいりたい」と述べた。

 警察庁が容疑者のDNA型データベースの運用を開始したのは2005年。登録件数は増加しており、警察庁のまとめでは、23年末時点で約175万件に上る。DNA型鑑定による個人識別の精度も向上しており、「究極の個人情報」とも指摘される。

容疑者のDNA型データベースの登録件数の推移

 また、指紋は約1166万件、顔写真は約1259万件がデータベースに登録されている。

 容疑者のDNA型データは国家公安委員会規則で、容疑者が死亡した場合と、「保管する必要がなくなった時」に抹消しなければならないと定めている。

 「必要がなくなった時」について、警察庁は「個別の事案ごとに判断している」と説明。具体的には誤認逮捕が発覚した場合や、高齢に達した場合などがあるという。23年に抹消したのは4204人で、うち死亡が理由だったのは3998人だった。

 近畿大の辻本典央教授(刑事訴訟法)は、今回の訴訟のケースについて、DNA型が余罪や再犯に決定的な意味を持つような犯罪ではないうえ、無罪が確定していることから、「1、2審が抹消を認めたのは妥当だ」と評価する。

 ドイツでは法律により、DNA型の収集、検査、抹消が緻密に規定されているといい、「事件の特性を考えて対象とする事件を定め、採取された人が不利益を被らないように法制化することが望ましい」と話す。【山崎征克】

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