単語カードを整理した特注の整頓棚=和歌山県有田川町下津野のALECで2024年9月9日午後1時36分、姜弘修撮影

 日本で初の「源氏物語辞典」を完成させた和歌山県有田川町出身の北山谿太(けいた)(1886~1966年)の業績や生涯を紹介する企画展「北山谿太 源氏物語に魅せられて」が、25日まで同町下津野の町地域交流センターALECで開かれている。21日と28日には金屋文化保健センター(同町金屋)で源氏物語と北山谿太に関する講演会がそれぞれ開かれ、町教委が参加申し込みを受け付けている。企画展、講演会とも無料。

 北山谿太は県師範学校を出て小学校の教諭となり、若くして宮原尋常小の校長に登用された。和歌や漢詩、論語の研究に取り組もうと国語・漢文の中等教員資格を取得。15歳の頃から書き続けた日記には1923(大正12)年に「生涯の研究を源氏物語に定む」と記している。32年に教職を辞し、源氏物語辞典の編さんに本格的に着手。1ページずつ一語一句を抽出して作成した単語カードは1万4000枚超に及んだ。

 独学で研究を続けて原稿を完成させ、42年に出版契約までこぎ着けたが、戦時中の物資不足で無期延期となった。日の目を見たのは57年、平凡社から日本で最初の源氏物語辞典として出版された。70歳を過ぎ「我が生涯の喜び、満足、安心、この一瞬に極まる」と日記に記し、66年に源氏物語の研究にささげた生涯を閉じた。

 企画展はNHK大河ドラマ「光る君へ」で改めて源氏物語が注目される中で開催。生涯をたどる写真パネルや直筆の日記、原稿など約40点を展示している。単語カードの一部も鑑賞でき、「ひかるきみ」を取り上げたカードもある。大量の単語カードを50音順に分けて整理した特注の整頓棚(町指定文化財)も見られる。

展示されている「ひかるきみ」の単語カード=和歌山県有田川町下津野のALECで2024年9月9日午後1時41分、姜弘修撮影

 町教委社会教育課の担当者は「本当に成し遂げられるか、不安があったことも資料から読み取れる。源氏物語という日本最高峰とされている書物に関係する人物が有田川町にいたということを広く知っていただきたい」と呼び掛けている。

 21日午後1時半から金屋文化保健センター大ホールで、テレビ番組にも出演している歴史作家の河合敦さんが「源氏物語の作者・紫式部と平安貴族たち」と題して講演する。28日午後1時半からは同センター小ホールで、郷土史家で町文化財保護審議会委員長の川岸光司さんが北山谿太について語る。

 定員はそれぞれ200人と100人で先着順。町教委社会教育課(0737・22・4513)に電話するか、町ホームページやチラシのQRコードを通じて申し込む。【姜弘修】

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