AED講習の必修化を求める提言書を盛山正仁文部科学相(右)に手渡した桐田寿子さん(左)と日本AED財団の三田村秀雄代表理事=東京都千代田区で2024年9月10日午前11時40分、斎藤文太郎撮影

 2011年に小学校の駅伝大会の練習中に倒れて亡くなった小学6年生の遺族が10日、自動体外式除細動器(AED)の普及啓発に取り組む日本AED財団(東京)とともに文部科学省を訪れ、AED講習を小学校の学習指導要領に盛り込むよう要望した。文科省によると、AEDはほとんどの学校に設置されているが、使用法の講習を実施している小学校の割合は3割にとどまる。

 要望したのは、さいたま市立小学校に通っていた桐田明日香さん(当時11歳)の母寿子さん(53)。明日香さんは11年9月、練習中に倒れたが学校にあるAEDは使われず、翌日に息を引き取った。

 寿子さんは財団幹部らと盛山正仁文科相に面会し、小学校からの救命教育の普及を提言。面会後に記者会見した寿子さんは「小学生からの救命教育で、命のバトンをつなぐ第一走者になることができる。救命教育が小学生から繰り返し行われることで、安全な社会が作られる」と訴えた。盛山氏は「学習指導要領の改定を待たずに、できることはやっていく」などと応じたという。

 現行の小学校学習指導要領では、AEDの使用方法は必修項目ではない。財団によると、24年度に小学校で使われている保健の教科書全てにAEDに関する記載があるものの、教え方は現場の裁量に委ねられている。

盛山正仁文部科学相との面会後、桐田明日香さんの遺影とともに記者会見した寿子さん(中央)と日本AED財団の桐淵博理事(左)、石見拓専務理事=東京都千代田区で2024年9月10日午後1時13分、斎藤文太郎撮影

 提言では小学校でのAED必修化に加え、研修の実施状況や資機材の配備状況を定期的に調査・評価する▽大学の教員養成課程でAEDの実技研修を必修化する▽児童生徒が倒れる事案を想定した教員向けの訓練を計画的に実施する――ことなどを求めた。提言は財団が取りまとめ、日本医師会や日本学校保健会など17団体が賛同したという。

 文科省の21年度調査によると、AEDは全国の国公私立学校の95・9%に設置されている。講習を実施している小学校の割合は30・2%だった。

 日本スポーツ振興センターによると、学校管理下での突然死は23年度までの10年間で小学生が51人。幼稚園~高校の全校種では209人だった。【斎藤文太郎】

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