「国民病」とも呼ばれる花粉症への対策が注目されている。岸田文雄首相は「社会問題だ」として取り組みを本格化。国会では超党派の「花粉症対策議員連盟」(通称・ハクション議連)が結成され、衆参両院から計150人が参加している。議連の幹事長を務める立憲民主党の後藤祐一衆院議員(神奈川16区選出)に、その狙いを聞いた。【聞き手・寺田剛】
林業の雇用を継続的に確保
――ハクション議連で何に取り組みますか。
◆花粉症対策事業に関する継続的な予算の確保です。2023年度の補正予算で60億円を確保しましたが、単年度で終わるような一時的な事業では、林業の現場で人を雇えません。雇用が増えなければ、花粉の発生源でもあるスギ人工林で継続して伐採できません。
25年度の当初予算では、山村で継続的に人を雇えるような体制にするため、引き続き予算を要求していきます。
――60億円を毎年、花粉症対策に投じることを目指すのでしょうか。
◆4000万人が花粉症に苦しんでいるといわれています。外出を控えることによる消費減退効果などを含めると、経済的に年数兆円のマイナス効果があり、税収も減っています。60億円という数字に必ずしもこだわりませんが、年数十億円の税金をかける説明はつくと思います。
為替の長期的なトレンドが円安になるとみられ、国産木材の相対的な競争力は高まっています。国産材の魅力発信や需要拡大とともに取り組みたいと思っています。
――私有財産でもある山林を公費で伐採することに理解を得られるでしょうか。林業の補助金依存体質が強まる恐れはありませんか。
◆昔なら伐採に補助金を交付することはありえなかったでしょう。昭和の高度経済成長期まで、山林は「財産」でした。ひと山あれば一家で食べていけたというケースもありました。
しかし、今は木材価格が低迷し、山の手入れすらできていないのが現実です。花粉症対策事業は、(伐採に公費を投じることで)都市の住民も一緒になって山の手入れをしっかり進めていくという意味にもなりえます。
花粉飛散量の効果、科学的な検証が必要
――森林環境を維持しながら一部を伐採する「択伐」ではなく、全てを伐採する「皆伐」では山の保水力が下がって土砂災害のリスクが高まりませんか?
◆皆伐は作業効率を高めますが、山の保水力が減るなどのリスクはあります。林業の現場のプロたちには、そういったリスクを回避するノウハウがあり、彼らも不適切な伐採はしないはずです。
都市住民の多くが発症している花粉症について、花粉の厳密な飛散分析は、実はできていません。全国的に同じように伐採するのではなく、例えば花粉症に効果のありそうな場所を重点的に伐採してみて、花粉の飛散量の増減を調べてみる必要があります。
都市への花粉飛散量を減らすために、科学的に検証できる形で人工林を伐採していく価値は十分にあると思います。
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