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 警察官が交代で勤務する交番とは違い、駐在所では「居住スペース」があり、生活をしながら住民の安全を守っています。

 8月の夏休み真っただ中、国内外から多くの観光客が訪れる、広島県の宮島にある駐在所も大忙しです。誰かがお店の前に6台の自転車を放置?また「自分がどこから来たのか分からない」という迷い人。さらに繰り返されるいたずらに悩む島民も。その犯人は?

 2人の駐在さんの奮闘を追跡しました。

■誰が?レストランに放置された自転車

宮島 この記事の写真

 日本三景の一つ、宮島。対岸の宮島口からフェリーでおよそ10分。世界遺産・厳島神社を一目見ようと年間450万人以上が訪れています。

 瀬戸内海に立つ色鮮やかな大鳥居や豊国神社、五重塔といった歴史的な名所も多くあります。

 G7広島サミット以降、日本人だけではなく、外国人観光客も急増しています。

フランスからの観光客
「インターネットで日本に行くなら宮島に行くべきと見て来ました」 宮島の駐在所

 観光客の急増に伴い、多くの人が駆け込んでくるのが駐在所です。島に住み込み、治安を守る駐在さんは、藤吉智弘警部補(50)と井原隆行巡査部長(50)の2人います。

 午前11時ごろ、1本の通報が入りました。道路脇にあったのは6台の自転車です。レストランの敷地内に放置され、困った店長からの通報でした。

6台の自転車 井原巡査部長
「(レストランの)お客さんじゃないよね?」 レストラン店長
「お客さんじゃない」
「迷惑、相当迷惑ですね」

 放置されていたのはレンタル自転車。「止めた人物」を見た人がいないか、周りに聞き込みを行います。

井原巡査部長
「あそこに自転車6台止めてあるよね?お客さんで心当たりない?」
「見てないよね?自転車を止めた人を探しているんですけど」

 周辺で有力な情報はなかなか得られません。

観光客の自転車利用は多い 井原巡査部長
「(Q.自転車を利用する観光客も多い?)多いですね。ただ、こういう所に止めないですよね。皆ちゃんとしたところ止めて。僕も初めてです」

 貼り紙で対応しようとしたその時、自転車をレンタルしていた外国人観光客が現れました。

自転車の借り主は外国人観光客 井原巡査部長
「チャリ?マイチャリ?」
「ここNO、NO。メーワク、この人」 外国人観光客
「アイムソーリー」

 井原さんがジェスチャーで伝え、無事、自転車を移動できました。

 増える外国人観光客に外国語での対応が求められますが…。

外国人観光客の対応は「身ぶり手ぶりとアプリ」 井原巡査部長
「(Q.外国語はできますか?)苦手ですね。いつもドキドキはらはらしながら、身ぶり手ぶりとアプリで乗り切っています」

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■役場に届いた1週間分の落とし物を記録

■役場に届いた1週間分の落とし物を記録

切符・ICカード入りのケースを紛失

 正午ごろ、駆け込んできたのはフランスから観光に来たという親子です。どうやら切符と交通系ICカードが入ったケースをなくしてしまったようです。

井原巡査部長
「警察にはまだ届いていません。ここにはまだ(届いていない)。ごめんなさい」 外国人観光客
「OK。アリガトウ」 井原巡査部長
「しばらく宮島にいますか?」 外国人観光客
「NO」

 親子は、すぐに島を出てしまうため諦めるといい、駐在所を後にしました。

「船に乗って出てしまうと、なかなか返すのが大変」 井原巡査部長
「ここ観光地なので、船に乗って出てしまうと、なかなか返すのが大変なので。時間との勝負といっていい」

 宮島は日帰りで楽しむ人がほとんど。すばやい対応が求められます。

かごを抱えた男性 藤吉警部補
「きょうもありますね」 男性
「たくさんありますよ」 藤吉警部補
「タオル、ピンク色、折り畳み傘…」 役場に届いた1週間分の落とし物

 なんと、このかごの中、役場に届いた1週間分の落とし物だといいます。なぜ駐在所に運び込まれたのでしょうか?

落とし物のデータを記入

 持ち主が気付いた時のために記録をするのも駐在さんの仕事。落とし物に関するデータを一つひとつ記入します。

 作業を終えて、ホッとしたのも束の間。また、1本の通報が入りました。

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■家はどこ?島で迷った高齢女性

■家はどこ?島で迷った高齢女性

 通報があったのは、駐在所から車で5分の距離にある食事処です。

 現場には高齢の女性がポツンとベンチに座っていました。

ベンチに座る高齢の女性

 通報者によりますと、この女性が食事処の前をふらふらと歩いていて、心配になって通報したといいます。

藤吉警部補
「今、何歳ですか?誰かと一緒でした?」 女性
「思い出せない」 藤吉警部補
「思い出せない?なるほどですね」 いつどこから来たか思い出せず

 女性は自分の名前は分かるものの、どこから来たのか、いつ来たのか、思い出せないといいます。身元が分かるものも持っていません。女性の足元はスリッパです。近くに住む人なのでしょうか?

 困った駐在さんが頼ったのは島の住民に詳しい男性です。

島民の男性
「配達も4〜5年していたから家やら何から分かる」
「(Q.女性に見覚えは?)ないね…」 駐在所へ

 島の住民ではない、となると観光客?しかし、周りに捜している家族も見当たりません。いったん、藤吉さんは女性と駐在所に戻りました。

 探している家族は不安に思っているに違いない…。藤吉さんが島内アナウンスをかけようとした、その時、1本の電話がかかってきました。

広島県内で女性を捜す届けが出されていた

 海をわたった広島県内の警察署に、女性を捜す届けが出されていることが分かりました。

藤吉警部補
「●●さんってご存じですか?」 女性
「主人」 藤吉警部補
「主人?主人ですかね?」

 夫の名前を聞いた女性が笑顔を見せました。

女性は認知症とみられ、1人で宮島へ

 女性は認知症とみられ、夫が目を離した隙にいなくなってしまい、1人でフェリーに乗って宮島に来たようです。

藤吉警部補
「私もついてパトカーに乗せて、パトカーごと船に乗って向こうに渡る」

 藤吉さんは、フェリーで女性を送り届けました。

無事、家族のもとへ

 その後、無事に女性は家族のもとへ帰ることができました。

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■捜査5カ月…玄関に“謎の訪問者”

■捜査5カ月…玄関に“謎の訪問者”

 観光客だけではなく1400人ほどいる島民からも頼られるのが駐在さんです。

井原巡査部長
「お元気ですか」 宮島島民
「おかげさまで。ついに犯人が分かってホッとしました」

 この笑顔の裏側には、ある迷惑行為との5カ月にわたる攻防がありました。

いたずらに悩み相談

 着付け店を営む女性は3月から、いたずらに悩み駐在さんに相談をしていました。

宮島きもの時間 吉原幸子さん
「こういうふうに(パンフレットを)設置していたんです。ところが、これを落として、こう中から引きずり出して」 店先のひな人形やパンフレット 何者かにはがされ、道路に放置

 店先のひな人形やパンフレットが何者かに剥がされ、道路に放置されることが相次いだのです。

吉原さん
「はじめは風で飛んだのかなと思いました。いたずらをされているのかなと思って駐在さんに相談をしてみた」 人感センサーカメラ設置

 観光客のいたずらなのでしょうか?駐在さんは吉原さんに“人感”センサーの防犯カメラ設置を勧めました。

 また、駐在さんは周辺の見回りも強化します。しかし…。

はがされた際、カメラに映らず 吉原さん
「その後も、やはり掲示物がはがされるっていうことがあって。全くその時には(人感センサー)カメラが作動していなくて。映ってなかったんですよ」

 カメラを設置しても止まらないいたずら。一体、犯人は誰なのでしょうか。

 不安が募るなか、5カ月が経った朝、玄関先で物音がしたといいます。

犯人は「シカ」

 その瞬間をカメラが捉えていました。慌てて女性が外に出ると、そこにいたのは2頭のシカです。その口には、パンフレットがありました。

宮島に500頭生息

 宮島には、およそ500頭のシカが生息していて、住宅街に出没することも多いといいます。何はともあれ、嫌がらせではなくてひと安心です。

吉原さん
「やつのせいでした」
「びっくりした」 「人間じゃなくて(良かった)」 井原巡査部長
「人間じゃなくて(良かった)。人間だと気味が悪いのでね」

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■年に一度の「宮島踊りの夕べ」 夜の警戒に密着

■年に一度の「宮島踊りの夕べ」 夜の警戒に密着

駐在さん、懐中電灯を持って外へ

 日が暮れた午後7時半ごろ、駐在さんが懐中電灯を持って外へ出てきました。

藤吉警部補
「これから地元のお祭りがありますので、安全安心に開催できるように、これから警戒に向かおうと思います」 年に一度の祭り

 この日は年に一度の「宮島踊りの夕べ」。島民に加え、多くの観光客も参加するお祭りが開かれる日です。

 盆踊りの様子を駐在さんは、昼とは違った鋭い眼光で警戒します。

 無事、何ごともなく祭りが終わり、駐在さんの顔にも笑顔が。

「安全に観光していただける宮島にしていきたい」 藤吉警部補
「宮島には住民の方が住んでいらっしゃいます。観光客の方も外国人含めてたくさん来島されています。そういった方々にも安全に観光していただける宮島にしていきたいと思っております」 この記事の写真を見る
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