長野県立歴史館(千曲市)は5日、上田城(上田市)を拠点に活躍した戦国武将、真田昌幸の書状の購入を目指すクラウドファンディング(CF)を始めた。笹本正治特別館長は「この史料を長野に残したい。ぜひご協力を」と呼び掛けた。
書状は昌幸の花押があり、関ケ原の合戦後、次男信繁(幸村)とともに九度山(和歌山県)に配流された後の1601(慶長6)年以降に書かれたとみられる。夫婦げんかで妻が自害し、殺害の疑いを掛けられた旧臣が昌幸を訪れ、仲裁を求めたことへの対応として、上田の奉行に指示を出す内容。「夫婦の諍(いさか)いはよくあることで、起請文(きしょうもん)も書いた上で無実であるなら分別ある判断を」などと記されている。
書状の内容や旧臣が昌幸を訪れて依頼していること、花押以外は祐筆(ゆうひつ)が書いていることなどから、配流された後も旧領に対して影響力を持ち続けていたことが分かるという。笹本特別館長は「武田信玄の父、信虎が追放後、甲州(現山梨県)への影響力を持てなかったように、通常はなかなかつながりは持てない。昌幸の立場は非常によく維持されていた」と分析する。
同館がCFを実施するのは2回目。2022~23年、武田晴信(信玄)の書状購入のために初めて実施し、315万円の目標に対して339万円が集まった。収集対象となる県関連の古文書や絵巻物などは多く、同館が古書店の目録などを調べた範囲でも23年度に約7000万円の取引があったが、「氷山の一角」という。一方、同館の史料購入予算は約420万円。とても足りないのが現状だ。笹本特別館長は「CFは『こんな危機的状況ですよ』と訴える手段でもある」と語る。
今回の目標額は250万円。書状購入(198万円)だけでなく、県ゆかりの史料収集にあてられる。寄付は県直営のふるさと納税受け付けサイト「ガチなが」で25年1月末まで。品物としての返礼はないが、寄付者を対象に歴史館での特別公開やオンラインの解説会を予定している。【鈴木英世】
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