織田信長から細川藤孝に送られた手紙の発見を発表した永青文庫の細川護光理事長(左)と、熊本大の稲葉継陽教授=東京都千代田区で2024年9月6日、高島博之撮影
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 強気で奔放なイメージのある織田信長が、細川家初代当主で戦国武将の細川藤孝に、すがるような手紙を送っていたことが判明した。手紙は「あなただけが頼りです」という内容で、細川家の文化財を所蔵する「永青文庫」(東京都文京区)で2022年に見つかっていた。永青文庫と熊本大が6日、発表した。

 藤孝は、信長の後押しで1568年10月に室町幕府最後の15代将軍となった足利義昭の側近「奉公衆」の一人。その後、信長と義昭の関係は、他の武将らの思惑もあり悪化した。

 手紙は72年8月15日に書かれたとされる。「今年は京衆(奉公衆)は誰一人として手紙や贈り物をよこしてこない。あなたからは、太刀と馬を贈っていただいた。例年通りの付き合いをしてくださる」と記されていた。義昭の側近では藤孝だけが信長と通じていたことがうかがえる。

 さらに「方々で骨を折っていただき心苦しいですが、今こそ大事な時。(京都の)南辺りの領主たちを、誰であっても、忠節をしてくれるなら、味方に引き入れてください」とつづり、「あなたの働きこそが重要なのです」と懇願した。

 義昭は73年2月に信長に対して挙兵したが、7月に信長によって京都から追放された。そして藤孝は、信長の家臣となった。

織田信長から細川藤孝に送られた1572年8月15日の手紙=永青文庫所蔵
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 永青文庫でこれまで確認されていた59点の信長の手紙は国の重要文化財に指定されており、今回の手紙はそれらより古い時期に書かれていた。

 調査した稲葉継陽・熊本大教授は「室町幕府の滅亡にいたる複雑な政治史を読み解く上で欠かせない事実を、信長自身が語った信頼すべき一次史料と言える」と説明した。

 信長の手紙は、10月5日から永青文庫で公開される。【高島博之】

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