深刻なコメ不足が問題となっているなかで台風10号の影響で稲が倒れるなど、新米にも被害が出てきています。さらに、野菜や果物などの農作物にも被害が出ています。
■新米の稲水浸し コメに亀裂
愛知県岡崎市の田んぼでは、本来8月に収穫の時期を迎えるコシヒカリが、台風の影響で稲が横倒しになってしまっています。
横倒しになってしまった稲 この記事の写真新米の季節を向え、無残にも倒れてしまったコシヒカリの稲。
記録的な大雨となった愛知県愛知県では台風10号の影響で降り始めからの雨量は400ミリを超え、8月の観測史上最大の記録的な大雨となった所もありました。
小久井農場 小久井孝幸社長「ここは一部倒れてるんですけど、もっとひどいと、全部倒れてしまう。そうなるともう収穫が本当に大変になるので」
「(Q.実際この辺りのものは製品として売ることができるのでしょうか?)(品質が)悪いものはやはり選別ではじかれてしまうので、収穫量が少し減ります。まだ今これは部分的に倒れてますけど遅くなればなるほど、どんどん倒れていきますので」 精米した時に亀裂が入る「胴割れ」 田んぼは雨水がたまったままの状態
倒れた稲は早急に刈り取らなければ、どんどん傷みが進行し、精米した時に亀裂が入る「胴割れ」を起こしてしまうといいます。さらに、田んぼには雨水がたまったままの状態になりました。
小久井社長「下もこんなにぐちゃぐちゃで。全然乾いていない」
「(倒れた稲の)下の方になると水の中に入っているので、そうすると今度は芽が出てくる」 水に浸かってしまった稲穂
なかには、水に浸かってしまった稲穂もありました。一刻も早く稲の刈り取りを行わなければ、コメの品質はどんどんと低下してしまいます。
コメの品質はどんどんと低下 小久井社長「(コメの)質の面も心配。1番良い1等級から2等級に落ちると(等級が下がるごとに)1000円ぐらいは(1俵の買取価格が)下がる。(収穫が)1週間遅れるだけでも1000万円ぐらいの損失が出てくる」
1週間ぶりに晴れた2日から3台の稲刈り機を使い、急ピッチで稲刈りを進めているといいます。そこに、追い打ちを掛ける事態がありました。
小久井社長「(きょう)あの機械(稲刈り機)が故障して、倒れているコメを刈ったりすると多少負荷が掛かるので機械(稲刈り機)が壊れてしまう」
「(Q.台風の影響で今回機械が1台(壊れた)?)またすぐ修理しないといけない」 負荷が掛かり稲刈り機が故障
1台2000万円する稲刈り機が故障。小久井さんの表情も曇ります。
倒れた稲の刈り取り作業と同時に行われていたのが、コメを乾燥させる作業です。
コメを乾燥させる作業 小久井社長「(Q.ここはどういう場所?)収穫してきたコメを乾燥させる機械。雨がずっと多かったので、コメの水分量がどうしても高い。刈ってきたコメを乾燥させるのに、乾燥させるお金(コスト)がどうしても高くなる」
「(Q.燃料?)燃料費です。灯油を使って乾燥させるので」
大雨で濡れたコメを乾燥させるために、通常よりも3〜4時間多くの時間が必要だといいます。
手間もコストも増え続けるなか、コメ不足改善に期待のかかる新米ですが…。
収穫ができていない状況 小久井社長「(Q.こちらが倉庫ですか?)こちらがコメの冷蔵庫になるんですけど、これが今年収穫したコメになります」
「(Q.例年に比べると量としては?)収穫が遅れていて、例年だと(倉庫の端まで)いっぱいに入っているんですけど、これだけ入っていないのは収穫ができていないということになる」
「(Q.やっぱり稲刈りが遅れている?)そうですね。台風の影響で1週間、稲刈りができなかった分、それだけ刈り取りができていないのでこれだけ空いている状況です」
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■橋・用水路が崩壊「新米刈れない」■橋・用水路が崩壊「新米刈れない」
大分でも深刻な被害平年8月に降る雨量の倍近い雨が1日で降った大分。ここでも米農家に深刻な被害がありました。
水に浸かって倒れてしまった稲 コメ農家「水に浸かって全部倒れているんです」
「(Q.水に浸かって大丈夫か?)あまり良くないですね。仕方ないですよね」
新米の収穫の直前でしたが…。
コメ農家「(今月)14日から稲刈りしようと思ってたんですよ」
「(Q.直前で(台風))直前です。一番悪いタイミングですね」 台風が過ぎ去り、さらなる問題も
台風が過ぎ去り、さらなる問題が起きていた田んぼもありました。倒れてしまった稲を一刻も早く収穫したいのですが、田んぼに向かう橋や用水路が流されてしまったといいます。
農家「全部の水路が流されているので全部だめです。水が来ません。このままだと稲は枯れる」 橋がなく田んぼに行けないというコメ農家 コメ農家
「橋がないから(田んぼ)に行けない。1週間以内に刈りたい。もう間に合わない。川からポンプで水を上げて水をあてないと枯れるし、収穫量が落ちるので何とかしたい」
落胆の表情を浮かべるコメ農家。
コメ農家「来年以降、水稲(コメ作り)を続けるのはどうしようかなと。他の職を視野に入れないと生活できない」 坂本農水大臣
この事態に、坂本農水大臣は「新米の生産量に大きな影響が出ることは想定されていない」と述べたうえで、次のように話しました。
坂本農水大臣「台風の影響につきまして、まだまだこれから様子を見なければいけないと思っております。新米の価格についてはこの品薄状態でありますので、平年よりも多少、割高感はあるというふうには思っています」
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■土砂崩れで名物イチゴのハウス崩壊■土砂崩れで名物イチゴのハウス崩壊
先月26日からの総雨量は、平年8月1カ月の4倍にもなった静岡県。
ビニールハウス10棟が飲み込まれた被害に遭ったのは、イチゴ農家のビニールハウス。広範囲に斜面の土砂が崩れ、ビニールハウス10棟が飲み込まれました。
マルヨシ農園 川嶋義史さん「まさかあんなひどくなるとは思わないもん」 静岡の名物・石垣いちご
斜面に築いた石垣の上で育てられることから“石垣いちご”と呼ばれ親しまれる静岡の名物。
今月中にもイチゴの苗をハウスに植える予定だったといいます。台風10号でビニールハウスは押し流され、苗だけが残されてしまいました。
川嶋さん「しょうがないよね。腐ってたってしょうがないしさ。食べた人がおいしいおいしいって言ってる時が一番良いね」
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■連日の雨で畑水浸し 収穫に影響■連日の雨で畑水浸し 収穫に影響
茨城では、台風10号による連日の雨で野菜の収穫にも影響がありました。
畑全体に水がたまっている 鈴木農園 鈴木弘晃さん「畑全体に水がたまっちゃっているのがお分かりになるかと思うんですけど、全部地面、水なんですよ」
収穫の時期を迎えているナス畑は、大雨の影響で水浸しになりました。排水作業が追い付いていない状況だといいます。
鈴木さん「根っこが水に浸っていると根っこが弱くなってしまって実の付き方も悪くなるので、全体の出荷量が減ってしまう」
すでに影響が出ているナスもありました。
腐ってしまったナス 鈴木さん「ナスの実にもこういう腐ってしまうような悪影響が出ています。もう2〜3日収穫できないので2〜3日分は全部パアというか、出荷できないんでお金になっていないという状況」
鈴木さんの農園では他にも問題がありました。一見すると、田んぼのようにも見えますが…。
水浸しで田んぼのようになった畑 鈴木さん「こちらが白菜を植え付ける予定の畑になるんですけども、ちょっとご覧の通り水浸しで」
「(Q.これが…畑なんですか?)そうです。畑です」 本来この時期に白菜の植え付けの作業を行う
本来であればこの時期、白菜の植え付けの作業を行うはずの畑は、台風10号の影響で水浸しになり使い物にならない状態になっていました。
鈴木さん「ちょっと足入ってみましょうか。今片足だけ。もうダメですよね。こうですもん。やっとここで止まりましたね」 畑はぬかるみ、ひざ下まで埋まってしまう
畑はぬかるみ、ひざ下まで埋まってしまいました。白菜の植え付けができる状態ではありません。
鈴木さん「今この状況で(畑に)入れないってなると植え付けがずれ込むじゃないですか。(異常気象の)雨なんかで品質が低下して出荷できないってなると、出荷量自体も増えることがないので(野菜の)値段が上がってくるのは必然になっちゃうのかな。絶望しかないですよね」
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■高級ナシ「ほとんど廃棄」■高級ナシ「ほとんど廃棄」
さらに今、シーズンを迎えているナシにも大きな被害がありました。
高級ナシ「かおり」こちらの農園で栽培していたのは「かおり」と言う品種のナシ。ジューシーで糖度が高く、リンゴのような香りが特徴。1つ1500円以上で販売されることもある高級ナシです。
大麓果実園 園主 細野厚さん「この木なんかね、何にも無いものですから(枝に)3つぐらい付いていたんですけどね。台風で落ちちゃった。個数で言ったら1500個ぐらい」
「(Q.そんなにですか?)ちょっとゾッとしますね」 多くが落下してしまった
「かおり」は通称“幻のナシ”と呼ばれる希少なナシ。手塩をかけ育ててきた自慢のナシですが、強風が吹き始め1時間ほどでその多くが落下してしまったといいます。
細野さん「(被害額は)計算すれば100万円とか150万円とかになる」
「(Q.150万円っていうのは相当痛いですよね)そうですね。今週これが続くと売り上げが半分にくらいになっちゃう。捨てる方が多い」 傷が付いたナシは廃棄するほかない
落下して傷が付いたナシは廃棄するほかありません。
悔しい思いも 細野さん「(Q.悔しい思い?)本当はまともな値段でしっかり(おいしいナシを)提供したい。寂しい限りですわ」
ナシの被害は長崎でもありました。
松尾観光梨園 松尾一男さん「9月中旬から下旬に収穫する予定だった(ナシが)3000個近くが落ちましたね」 長崎でもナシの被害
被害に遭ったのは、ナシの王様と呼ばれる「新高(にいたか)」。大きいものでは1玉1キロもの実を付けます。
松尾さん「園の周辺に防風ネットは常時張っていますし、柱はそれなりに立ててるんですけど、追加で柱を立てるということが基本的にはできませんでしたね、今回の場合は。あまりの繁忙期に(台風が)来たもんで」 落下したナシの7割は廃棄処分
落下したナシの7割は廃棄処分。残りは傷物として価格を安くして販売しているといいます。
松尾さん「(被害額は)50万円から100万円。もちろん痛手ですね。(ナシが)地面に落ちている姿見るのは辛いところではありますね」
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2024年9月4日放送分より)
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