元日の能登半島地震で大きな被害が出た世界農業遺産の白米(しろよね)千枚田(石川県輪島市)で3日、稲刈りが始まった。地元・南志見(なじみ)地区の住民でつくる愛耕会の会員が被災しながらも、100キロ余り離れた金沢市など県南部の避難先から毎週末戻って日本海に面した棚田の修復にあたり、収穫にこぎつけた。
千枚田は年会費を払うオーナーが支援し、愛耕会の会員が耕作を続けてきた。地震後、千枚田に隣接する道の駅の食堂が休業していたこともあり、春先には会員がそこに寝泊まりして、あぜ塗りや草取りなどをして、亀裂が生じた田を直した。
今年は1004枚のうち約120枚を作付け。台風10号の影響による被害は、風で一部の稲が倒れた程度にとどまった。この日の稲刈りには、会員のほか石川と愛知、岐阜3県のオーナー3人を含む計約30人が参加。雨上がりでさわやかな風が吹く中、10枚程度の田の稲を刈り取った。
千枚田は「天日干し」を守っており、能登地方伝統の木と竹で組まれた棚「はざ」にかける作業もした。岐阜県大垣市の川合千代子さん(75)は「地震後、何かできることはないかと考え、オーナーになりました。よくぞこの地で育ってくれました」と稲束を手に語った。
会員の中には7月に入ってようやく自宅に戻れたり、仮設住宅に入居できたりした人も多い。白尾友一・愛耕会会長(60)は「たった120枚ではなく、やっとできた『奇跡の120枚』。来年は何枚作れるか分からない。雪が積もるまでにどれだけ修復できるかです」と話した。
今回の地震では、輪島市内だけでも270カ所の農地に亀裂や地盤沈下などの被害が出た。地震被害が集中した奥能登地方(輪島市と珠洲(すず)市、能登町、穴水町)では、水田の作付面積は2023年の6割にとどまった。【竹中拓実】
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