東京都狛江市で1974年、台風による大雨で堤防が決壊し、濁流が住宅地を襲った多摩川水害から「防災の日」の9月1日でちょうど50年。水害の教訓を後世に残そうと河川敷に建てられたステンレス製の「多摩川決壊の碑」を、半世紀を節目に市がリニューアルする。
大雨のたびに事前に職員が6人がかりで碑を市役所まで移動する作業を四半世紀にわたり続けていたが、少ない人数でも運べるように軽量化した。手の空いた職員を他の見回り場所に振り分け、降水時の警戒を強化するという。
市などによると、多摩川水害は台風16号の影響で警戒水位を超えてはんらん。市は予定していた防災の日の訓練を中止し左岸の住民に避難命令を出したが、2日未明に民家19戸が次々に流される甚大な被害となった。3年後に多摩川水害を題材にしたテレビドラマ「岸辺のアルバム」が放映され、全国的に知られるようになった。
多摩川決壊の碑は99年3月、建設省(現国土交通省)京浜工事事務所と同市によって左岸の河川敷に建てられた。高さ1・4メートルの三角すい型で重さ160キロ。河川法の規定で出水時は河川敷の工作物は撤去しなければならないため、豪雨が予想されるたびに、市職員が鉄パイプを使って担いで車に載せた。約2キロ離れた市役所まで運び、雨がやむとその都度、元に戻していた。
新たな碑は同じ形だが重さ約60キロに軽量化。ステンレス板の厚みを旧型より薄くし職員2人で運べるようにした。8月27日には台座に正確に設置できるか確認する仮止め作業が行われた。市は9月1日に小田急線狛江駅前の「エコルマホール」で開催する防災ショーの会場ロビーに新調した碑を展示し、お披露目する予定だ。
市環境政策課の担当者は「水害の記憶も薄れつつあり、新しい碑を見て、日ごろから災害に備える気持ちを新たにしてほしい」と話している。【山本悟】
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