人と人をつなぐSNS。時として会いたい人を探した結果、多くのユーザーの支援によってたどり着き、感動の再会を果たせることもある。反面、人探しをしている本人に悪意があり、気付かないうちに他のユーザーもその手助けをしてしまい、トラブルにつながるケースもあるという。『ABEMA Prime』では、実際にSNSで人を探した人、探された人、また人探しのプロである探偵を中心に、SNSを利用した“人探し”について考えた。
【映像】SNSでの人探し 拡散してはダメ?投稿の見分け方
■SNSで子どもの命の恩人にたどり着けた母親
ユイさんは今年2月、夫と3人の子どもと一緒に5人で公園に出かけた。第3子は生後1カ月の赤ちゃん。上の2人はユイさんが一緒に、第3子を夫がベビーカーに乗せていた。すると近くに自衛隊の大型ヘリコプターが着陸。興味をひかれた夫が、ベビーカーから手を離したところ、巻き起こった強風に煽られ赤ちゃんはベビーカーごと近くの池に転落。慌てて救い出したものの、夫はパニックになってしまった。
この時、赤ちゃんを救ってくれたのが周囲にいた3人。1人は女性で看護師だった。「すぐに『体温を下げないように』と服を脱がせてくださった」。また男性2人は脱がせた服の代わりに自身の上着を脱いで貸してくれたという。ユイさんは、その場で連絡先を聞いたものの「名乗るほどでもないから、と。上着もいいからという風に言われて立ち去られた」という。
その後、帰宅した夫婦は相談し、事の経緯をXに投稿。すると瞬く間に拡散し、15万の「いいね」に7万のリポスト、6800万PVにまでなると、地元テレビ局から取材の申し込みも。すると、放送を見た男性2人がテレビ局に連絡をしたことで後日再会、無事に上着も返せた。また女性看護師も職場の上司がXの投稿を見たことをきっかけに、ユイさんにDMで連絡。改めて直接、電話でお礼を言うことができた。
当事者間の話としては感動のエピソードではあるが、Xにおける反応は、全てがいいものでもなかったという。ユイさんは「私は、場所も日時もありのままを書いた。それに私たちがしてしまったことは、ちょっと親の責任・過失があるので、叩かれても仕方がないという気持ちで投稿はした」という。また、「いろいろ誹謗中傷もあり、きつい言葉も来た。ちょっと怖かった思いもしたので気をつけたい」と、当時を思い出した。
■Facebookをきっかけに22年ぶりに母と再会した娘
ヤマムラさんは逆にSNSで探された側の人だ。ヤマムラさんには、フィリピン人の母親がいたが、5歳のころに両親が離婚。母とは生き別れた。当時、母はどこに行ったのかと父に聞いたところ「すごく怒られて、そこから私はこの話をしちゃいけないんだという認識を持った」そうだ。
いつかは会いたいと思いつつ、手がかりもないまま過ごした22年後、ヤマムラさんが27歳の時に、Facebookに知らない人からメッセージが来た。「外国人の名前、外国語で来たので、一瞬何かなと思ったが、写真を見た時にピンと来て、お母さんをなんとなく思い出した」。その後、当時の住所や家族の名前、電話番号などを確認していくうちに、母であると確信できるようになった。母は再婚しており、別の家庭を持っていたが、「ずっと(前の家族が)忘れられなかったみたいで、勇気を出してFacebookで検索して連絡したと言っていた」という。
ヤマムラさんの家族は父のほかに妹もいるが、父はヤマムラさんが母と再会したことを知らない。「母は悪人という感じで関わるなという状態だし、妹も全然母の記憶がないと思う。母は『会いたい』と言っていたが、たぶん無理だと思うという話をした。妹には1回、少し母の話をしたことがあるが、全然興味がなく、会いたいとも思わない感じだった」そうだ。
■探したい人、探されたくない人 それぞれの事情も…
「感動の再会」と言えば聞こえはいいが、探している人がいい人ばかりなわけではなく、また探されたくない人がいるのも事実だ。さくら幸子探偵事務所の姉崎一美氏は、SNS上に情報を掲載することのリスクを指摘した。例えばユイさんの場合には「今回は、子どもを助けてくれた命の恩人という意味では、稀なケース。ちゃんとお会いできて、思いも遂げられたが、そういかないこともある。事実として簡単に言えば探さないでほしい人がいる。探されたことによって住所がわかってしまったり、自分がその場所にいたことを秘密にしていたりする人もいる。みんな本当にいい人で、清く正しく暮らしている方たちならいいが、そうじゃない方も結構いる」と語った。
悪意を持って人を探す典型例がストーカーだ。姉崎氏のところにも依頼は来るが、この時には見極めが最重要ポイントになる。「担当する相談員カウンセラーがいるが、見極めが必要なので、関係性については裏付けを取っていく。当社としては、依頼する方の身元も確認しないといけないし、探される方の立場も考えないといけない。両方守るために、契約前の聞き取りに、非常に神経を使う」ものだという。
また面談を経て契約、人探しを実行した後もトラブル要因はある。探し当てた相手が、依頼者と会いたくないというケースであれば、たとえ依頼者の希望であっても、会わせるわけにはいかない。予め、断られる場合に関しても承諾を取って、誓約書も作るという。さらに、暴力などの加害者から対象者が逃げ出した場合、加害者本人が「急にいなくなったので、すごく心配だとか、事件に巻き込まれているんじゃないかと相談に来る場合もある」という。
■相談を受ける探偵「探さないでくださいと思っている人にとってはすごく迷惑」
姉崎氏のところには、実に多様な依頼が舞い込んでくる。離れ離れになった親子のケースでも「たとえば子供を探して面倒を見てもらいたい、介護してほしいという親もいれば、自分の借金を返してほしいという“毒親”みたいな人もいる。逆に子どもが親を探して欲しいと言っているが、親は子どもがDVを受けて逃げていることもある」と説明した。探される側に不都合がある場合「探さないでくださいと思っている人にとってはすごく迷惑」な行為になる。SNSでの人探しは、その後も長く痕跡が残ってしまうケースもあり、さらに慎重な利用が重要だとも伝えていた。
(『ABEMA Prime』より)
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