損害保険大手4社が、他社の契約者情報を代理店を通じて自社側に漏らした問題で、各社は30日、金融庁に事実関係や再発防止策を報告した。氏名や電話番号など流出した契約件数は4社で計約250万件に上った。情報の一部は営業活動に使われた可能性があり、金融庁は再発防止策を検討する。
損保業界では2023年、中古車販売大手ビッグモーター(現ウィーカーズ)による不正請求問題や企業向け保険のカルテルが相次いで発覚している。今回は自動車保険や火災保険の証券番号や保険の種類、保険料、満期時期などの情報が競合他社に流出しており、業界ぐるみの不適切な慣習がまた一つ明らかになった。
漏えい件数は、東京海上日動火災保険96万件▽損害保険ジャパン99万1000件▽三井住友海上火災保険33万6000件▽あいおいニッセイ同和損害保険21万7000件――。
漏えいは複数の保険会社の商品を扱う「乗り合い代理店」を介して行われており、損保の社員が代理店に出向した際、他社の契約者情報を自社側に伝えていた。火災保険を販売する千葉銀行では、02年から20年以上にわたって損保ジャパンの出向者が最大で計1万1000件超の情報を漏らしていた疑いがある。損保側は漏えいの目的について「他社から当社への契約切り替えや追加提案を推進するため」などと説明している。
金融庁は7月に保険業法などに基づく報告徴求命令を出しており、各社の報告書を精査する。
また、自動車ディーラーなどの代理店の本部が、損保各社の契約者情報を店舗にメールで伝える際、他の損保の担当者にも同時に伝えていたケースが数多くあった。損保側は代理店を監督する立場にありながら、適切な指導をしなかった。
代理店を通じた情報漏えいは生命保険業界でも発覚している。第一生命ホールディングス(HD)は8月、子会社の第一生命保険社員が出向先の代理店で、7万2000人分の他社情報を自社に漏らしていたと発表した。【井口彩】
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