突風のため、交差点ではトタンのようなものが電線にぶら下がり、切れた電線が地面に垂れ下がっていた。停電で信号が消え、車は徐行しながら進んだ=宮崎市城ケ崎4で2024年8月29日午前9時35分、加藤学撮影

 29日に九州南部に上陸した台風10号は、強い雨や風によって九州各地に爪痕を残した。台風の勢力は衰えているものの、依然として進むスピードは遅く、影響が長引く地域では今後も被害が広がる恐れがある。

 「家が横揺れし、10秒ほど続いたので、最初は地震かと思った。その後、ドーンという激しい音がして、ガシャンと何かが割れる音がした」。宮崎市で28日夜の突風の被害にあった40代男性は顔をこわばらせた。外に出ると、自宅前に止めていた自家用車の後部ガラスが飛来物で粉々に割れていたという。「15年住んでいるが、こんなことは初めて」と声を震わせた。

 宮崎市消防局などによると、突風は28日午後1時50分ごろと同10時50分ごろの2回発生。1回目は宮崎市佐土原町付近、2回目は約17キロ離れた同市の大淀川河口付近で発生しており、あおられて転倒するなどした男女計14人が救急搬送された。突風で老人ホームのガラスも割れ、入所者ら5人がガラスで頭を切るなどした。

 市によると、突風以外の被害も含め、29日午後4時現在でけが人27人を確認。建物被害も相次ぎ、住宅137件、倉庫や事務所など72件の計209件の被害が出た。宮崎地方気象台は現地調査の結果、1回目の突風は「竜巻発生と推定した」と発表。2回目についても確認を進めている。

 台風が上陸した鹿児島県でも、各地で人的被害が出た。屋根から転落するなどした60~90代の男女3人が重傷を負ったほか、軽傷者21人が確認されている。住宅被害は一部破損が26件に上り、日置市など6市町では断水も起きた。

 一方、九州北部では線状降水帯が発生し、河川の氾濫や道路冠水の被害も出た。大分県由布市では29日午前、大分川支流の宮川が氾濫し、市は午前8時過ぎ、周辺に危険度が最も高い「緊急安全確保」を出した。近くで宿を営む50代の女性は「田畑が一面、水につかった。警戒はしていたが、引き続き命を守る行動を取りたい」と話した。

 停電も相次ぎ、九州電力によると、29日午後4時現在で約22万4000戸が停電。鹿児島県では全世帯の約2割に当たる17万9000戸で停電しており、復旧を急いでいる。

 台風により災害が発生する恐れがあるとして、大分県は29日、全市町村に災害救助法を適用すると決定。28日には、福岡県が36市町、鹿児島県が全市町村、宮崎県が24市町村に適用を決めている。災害救助法が適用されれば、避難所設置の経費を国や県が負担する。【下薗和仁、加藤学、森永亨、池田真由香】

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