「父親、マジで早く死んでほしい」「母親死んだら踊り狂って喜ぶ」といった叫びの声が、SNS上にあふれている。
【映像】「早い話が毒親ですね」ななさん(29)が父の死を願うようになった経緯
一見不謹慎だが、親の死を願う子どもは実は数多く存在している。父親の死を願う、フリーターのななさん(29)もその一人だ。「早い話が毒親。自分が正しいと思っていることが、全て正しい。独裁的支配です」と語る。
親の死を願うことはダメなのか。毒親問題に詳しいノンフィクションライターの旦木瑞穂氏は、取材を通して「毒親自身が亡くなっても、とらわれ続けている人が多い」と語る。「親の死を待つよりも、早く物理的・心理的に距離を置いて、自分の人生を取り戻してほしい」。世間では「恩をあだで返す親不孝で不謹慎」や、「お世話になっていて、そんな親不孝なことは考えられない」との指摘もある。親の死を願ってしまうことの是非について、『ABEMA Prime』で当事者と考えた。
■「父親に死んでほしい」と願う、ななさん(29)
ななさんは、小学5年生の頃から、父親の死を望んでいる。15歳の時に別居したが、その後も度々訪ねてくる。「死んでほしい」と願う主な要因としては、進学・就職など価値観を押し付けて支配してくる心理的虐待をはじめ、年に数回、自宅で暴れ回ること、洋服や生活用品すら新しいものを買わせてもらえないことなどがある。
父親は「気に入らないことがあると、大声でぶち切れたり、家の中で暴れたり、物に当たったり」する。「どこに地雷があるのかわからずビクビクする。直接的な暴力はないが、階段の柱を折ったり、炊飯器を壊したりする。私の就職が難航していたときに『公務員を受けろ』と押しつけてきて、思い通りにならないと暴れた」と振り返る。
幼少期には「肩車してもらった」思い出もあったが、「友達に『父に叱られることはあっても、感情に任されて怒られることはない』と言われて、うちは違うと知った。新しいものも、買ったことがバレると、『どこで買った』『いくらした』と聞いてくるので、値札をこっそり捨てている」と明かす。
ななさんの父親(70)は、大学卒業後に地方公務員を経て、定年後は運送業をしている。性格は、自宅では家族を支配するも、職場では腰が低く、周囲からは好印象で、優しい人に見られる。子どもから見た父親の性格は、「真面目だが融通が利かない。頑固だが、小心者なところもある」。家と外とのギャップは「鳥肌が立つくらい」に違う印象だという。
母親はどのように対応していたのか。「かなりケンカして、父の怒鳴り声と、母の金切り声が上がっていた」。しかし、ななさんの気持ちは、父親に届いていないようだ。「言ったことはあるが、自分に都合の悪いことは忘れて、真に受けてくれない。今もたまに家へ来て、ドアを開けないと、ノブをガチャガチャやられたりする」と述べた。
■毒親の主な要素
いわゆる「毒親」の主な要素としては、「●●大学に行きなさい」「恋人と別れなさい」といった過干渉、「親の言うことを聞け」「あなたなんか産まなきゃ良かった」といった暴言・暴力、「子どもにかまわない」「食事や身の回りの世話をしない」といったネグレクトがある。
ななさんの父親も「毒親」に当てはまるのか。旦木氏は「子ども自身が『毒親』と言うのなら、毒親ではないか」と指摘し、「精神的な虐待と言える。目の前で物を壊されて、怒号が飛び交うのはDVにあたる。居心地の良くない家庭だったのだろう」と話す。
元衆議院議員で弁護士の菅野志桜里氏は、子が親の死を願うことを「ダメとは思わない」と語る。「親であれ他人であれ、死を願うことは人間にあり得るが、願うことで苦しくなるのではないか。周囲の評価よりも、自分として苦しい気持ちにならないのか」。この問いに、ななさんは「つらさよりも、『父親を憎むことが許されるんだ』と気づけた幸せがある」と返す。
ハヤカワ五味氏も、最近まで「両親とも死んでほしい」と思っていた。「ここ数年で折り合いが付いた。今も『生きてほしい』とは思っていないが、『興味がないな』と、いい具合の距離が生まれた。これまでは“親らしさ”を期待して、友達の『親との会話』や『親に頼った経験』がうらやましかったが、世の中にいる“変な人”を見て、たまたま親もそうだったと割り切った」。
■「あたたかい家庭に憧れるが、自分が実現できるかは不安」
ななさんは「親が死んでから人生が始まる」と話すが、同じように考える人は他にもいる。みゆさん(40代)は、母が毒親(過干渉・ヒステリック・虐待)で、小学生の頃から死を願っている。現在は別居しているが関わりを断ち切れず、母親が死ねば自分が「普通」になれると考える。SNSにも、同様に「親が死んでから、やっと人生が始まる」「親が死んだら自由になれる」といった投稿が見られる。
ななさんは現在、“死を願うも殺したくない”といい、「包丁を買って殺そうとしたこともあるが、殺した先にある未来と、死ぬのを待つ未来を比べた結果、自分で殺すのはコスパが悪い。どちらの方がいいか、ある程度は冷静に考えられている」。
死を待つ時間が“もったいない”との意見もあるが、「姿や声、存在自体が、私の人生にとって邪魔だ。もったいないと言われるが、殺す決断はできない。かといって全く関わらないこともできない。LINEをブロックしても、家に電話が何度もかかってくる」と話す。
父親から物理的に離れられるよう、母親がサポートする形もあり得るが、「母はそこまでしない。考えてもいないのでは」と語る。「父と住まわされる最悪の事態は免れている状態だ。母親は離婚したくないタイプ。母の両親も離婚していて、その連鎖が嫌だと言っている」。“連鎖”については、父親側にも考えられる。「貧乏な生活で、子どもの頃には親戚中をたらい回しにされていた。今で言えば『虐待』とされることも、たぶんあっただろう」と推測。
ななさんは、現状を変えたい思いがある。「自立できるなら、居場所も連絡先も教えずに逃げたい。可能な限り早く離れたいが、現実性を考えると、後回しにしてしまう」。いざ逃げる際には、新しい家族を持ちたいか。それとも、もう家族を作るのはつらいのか。「あたたかい家庭に憧れるが、自分が実現できるかは不安。親から受けたことを、周囲にもしてしまうのではと、自分に疑いの目を向けている」と答えた。
(『ABEMA Prime』より)
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