今年で20回目となる「日本・イスラエル・パレスチナ合同学生会議」が福岡市で開かれた。イスラエルとパレスチナから参加した男女4人は26日、シンポジウムに登壇後、報道関係者の取材に応じ、イスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区で戦闘が続く中、対話や交流の場に参加した思いを語った。主なやり取りは次の通り。【まとめ・日向米華】
――参加の動機を教えてください。
◆セダル・ネブドル・タレクさん(24)=パレスチナ パレスチナにいる時は、周りの人を助けることもできず自分の無力さを感じることもありました。今回のプログラムは人に自分の意見を共有し感情を表現できるとても貴重な機会なので、自分の声を通じてパレスチナの現状を世界に届けたいと思いました。
◆ガイ・サハリ・ダニエルさん(29)=イスラエル 実際にお互いの目を見て、お互いのことを人間だと認める。その上で解決に向けて動くことができる数少ない機会だと思ったからです。
◆アカラン・ダナさん(26)=パレスチナ パレスチナ人がいることを日本で認識してもらうとともに、私自身もイスラエル人と会って自分の中の知識や認識をさらに広げていきたいと思ったからです。
◆リフシェツ・アディさん(22)=イスラエル 平和の達成のためには対話が大切だと信じているからです。多くの悲劇が数字に反映されていますが、数字が大きすぎて理解しにくい状況になっていると感じています。だからこそ、私たちが発信し、話を聞いてもらうことがとても大事だと思っています。
――一番印象に残った対話は何ですか。
◆ダニエルさん お互いの人生グラフを紹介しあったことです。参加者がこれまでにどのような人生を歩み、トラウマを抱え、目標を持っているのかを共有できました。今まで他の人にあまり話せてこなかった心情についても話すことができ、とても感情に満ちた瞬間でした。陳腐な表現かもしれませんが、友達以上に家族と呼べるような存在になったと思います。
◆タレクさん (原爆資料館を訪問した)長崎での経験はとても衝撃的で、私たちが今置かれている状況を思い出させるような機会でもありました。長崎の人が戦後どのように生き抜き、どのようにして人々を許してきたかということも学ぶことができました。ただ、こうした学びを自分の国に持ち帰ることができるのか、持ち帰るべきなのかという葛藤が今も私の中にあります。
――対話を通じて気づいたことはありますか。
◆アディさん 参加者の中には想像できないような(心の)痛みを抱え、どうやって対応すべきか分からない人もいます。そうした中で心を開いて話すことはとても難しく、参加者からはとても刺激を受けました。たとえお互いの意見に不同意なことがあったとしても、愛を持って接することがとても大事だと感じました。
◆ダナさん 日本で素晴らしい人々と出会い、ガザ地区のことなどについて議論できたのはとても誇りに思います。一方で戸惑いもありました。こうして議論を深めても、パレスチナに帰ったら私たちには検問所を通過しながら過ごす日々が待っています。家に帰れば戦禍の中での生活です。外に出て初めてこうした環境が普通ではないことに気づき、怒りを覚えました。
――日本で開催する意義をどう感じていますか。
◆ダニエルさん 長崎での平和学習は、欠けていたパズルのピースが見つかったような感覚でした。戦争におけるお互いの責任や罪の意識、痛みやトラウマを共有することで平和を創り出すことができると感じました。これは夢物語でもただの理想でもありません。それだけでも日本で開催した意義はあると思っています。
――今も続く紛争に対し、自身ができることは何だと思いますか。
◆アディさん 考えるよりも物事を感じようとすることが大事ではないでしょうか。暴力に遭ったり、本来保障されるべき権利を奪われたりする人々がいる状況の中、痛みを考えるのではなく感じることができれば、状況はもっと改善するはずだと考えています。
◆タレクさん 今パレスチナで起きていることは、考える限りで最悪の状況です。日本で暮らす人々が朝から考えなくていいようなことを、現地の人は気にしなければなりません。例えばここにあるティッシュを見つけることも簡単ではありません。こうした状況の中で自分ができることは何もないのです。唯一できるのがこうして状況をお話しすること。しかし状況は悪くなる一方で、脱出できる扉は閉ざされたままというのが現状です。
――改めて世界に訴えたいことはありますか。
◆ダナさん 私たちは人間です。兵士ではなく市民で、誰かの父であり母、妻であり夫、娘でありあなた方のように夢を抱えた存在でもあります。私たちの希望を阻む物があまりにも多すぎます。国際社会のこれまでの行動には失望しています。人々が死んでいくのをただ見ているだけ。私たちはグラフや表の中の数字ではなく、がれきの下に埋もれた名前も分からない死体ではありません。人間です。私たちは助けを必要としています。
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