東京電力福島第1原発の事故を受け、福島県の親子を招待する「保養キャンプ」活動を続けてきた団体「母ちゃんず」の代表、竹内亜紀さん(52)=相模原市緑区=が、区内の空き家を改修して民泊施設「GAYAGAYA(ガヤガヤ)」を開業した。東日本大震災の被災地の親子がいつでも格安で利用できる「常設の憩いの場」にしようと奮闘する。【佐藤浩】
母ちゃんずは、竹内さんと友人が、原発事故による放射性物質の拡散に不安を抱く福島県の親子に何かできないかと思い立ち、2011年10月に設立。放射性物質の拡散を「見えない空襲」ととらえ、戦時中の学童疎開から発想し、「保養キャンプ」実施に至った。
12年3月に初めて福島県の親子を招いて数日のキャンプを実施。宿泊施設は近隣の公的施設を利用した。以後二十数回にわたり、同県の延べ約950人の親子(主に母子)を無料で招いた。
時期は夏休みと春休みで、複数の親子が参加した。帰る際、見違えるほど表情が明るくなった母親を竹内さんは何度も見てきた。
竹内さんは「母親の都合の良い日程で、宿泊費用を安くして、いつでも来てもらうようにしたい」と考え、空き家になった民家を借りて民泊施設の運営をしようと決意。1年前から物件探しなどを始め、知人の紹介で、緑区川尻の山あいの民家を見つけた。
木造2階建ての4LDKで、高尾山(東京都八王子市)にもほど近い。小鳥がさえずり、蛍も見られる環境だ。民家の所有者の加賀谷一樹さんに趣旨を説明すると快諾してくれたという。施設名「GAYAGAYA」は、ガヤガヤ楽しむことと加賀谷さんへの敬意を込めた。
建物の改修資金調達には苦労した。各部屋にエアコンを設置し、床の土台の一部や雨漏り箇所の修繕などで計約650万円かかった。周囲の協力を得たほか、クラウドファンディングを利用して約280万円を集めた。
7月にオープンし、毎回1グループが1棟を借りる宿泊形態を取る。福島、宮城、岩手の被災地3県に住み、保養目的の人の利用料は1人1泊1100円(2歳未満無料)とした。
一般の利用者は1人5500円(同)。既にインバウンド(訪日外国人)の利用もあった。一般の利用を増やし、運営を安定させていきたいという。
竹内さんは「忙しいが、楽しい。福島の人たちにはまだまだ知られていないので、パンフレットを作って配りたい。『保養』を意識しなくていいので『安く泊まれる』『自然があるから行ってみよう』といった感覚で来ていただきたい」と話している。詳細はホームページ(https://gaya-gaya.org)。
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