台風10号は、勢力を強めながらゆっくりと北上する見通しですが、すでに遠く離れた場所にも大雨などの影響をもたらしています。栃木県では26日未明にかけて、例年の8月一月分の雨が、3時間足らずで降りました。気象庁は27日午前中、愛知県・岐阜県・三重県・静岡県に線状降水帯が発生する可能性があるとして、警戒を呼び掛けています。
■栃木 未明に線状降水帯発生
栃木県では26日、突然の大雨によって各地で冠水被害が相次ぎました。
住民
「俗にいう『50年に1回』『100年に1回』そんな降り方」
住民がこう語るほどの雨は線状降水帯が発生したためです。塩谷町では、3時間に降った雨量は観測史上最大の206ミリに達しています。25日夜に巡回していたという、消防団員の増渕さん。その時、見たのは見慣れた街とは程遠い姿でした。
塩谷町消防団員 増渕健一さん(57)
「隣の道路が川のようだったので、向こうまで行けなかった」
大雨による被害は冠水だけではありません。鹿沼市の長安寺では、裏山で土砂崩れが起き、大量の草木が駐車場に押し寄せました。幸いだったのは人や建物に被害がなかったことです。
長安寺住職 寺山正明さん(76)
「26日未明あたりにすごい雨が降ってて。真っ暗だから見えない。朝を待っていたが、その時にはこのような感じで」
記録的な大雨になった原因の1つは、まだ遠く離れた場所にある台風10号です。台風からの暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で大気の状態が不安定になり、積乱雲が次々と発生しました。
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■直撃か?対策急ぐ農家“死活問題”■直撃か?対策急ぐ農家“死活問題”
その台風10号。気象庁と国交省が合同で会見を開き、警戒を呼び掛けました。
気象庁予報課 立原秀一主任予報官
「台風は非常に強い勢力で接近する恐れがあります。この後、北西から転向して北から北東に進路を変える段階で、台風のスピードとしては落ちてくる。台風の影響が数日に及ぶ長引く影響がある」
23日時点では東海方面に進む予想だった台風10号。しかし、週末に進路は西寄りへと変わり、週半ば以降、九州に上陸する可能性が出てきました。速度が遅くなったことで影響が長引く見込みです。
進路の読めない台風の動きに人々は翻弄されています。鹿児島県の種子島の農家は、ハウスを針金で補強する作業に追われていました。
作業する人
「台風が来た時、風が入ると(ハウスを)持ち上げるから。これが上がらないように」
ハウスの中で栽培されているのはマンゴーです。すでに大部分は収穫を終えたといいますが、ハウスが無事かどうかは死活問題です。
農家 中村保夫さん
「台風でハウスが壊れると来年からできない。ハウスが持てばとりあえず安心。今回の場合は最初予定していなかったが、コースがたまたま直撃という形になるので、養生をちゃんとしようと思って今動いているところ」
サトウキビも育てている中村さん。こちらは野ざらしでマンゴーとは勝手が違います。
農家 中村保夫さん
「やりようがないというか、面積も広いし対策できない。実際問題として、スピードの遅い台風とか途中で曲がる台風というのはなかなか難しい。諦めるわけじゃないけど納得して」
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■被害残る震度6弱の被災地は■急な進路予想変更に「慌てて避難」
普段は別の港にとめてある漁船を急きょ、堤防に守られた港へ避難させた漁師もいます。
カツオ漁師 金川泰久さん
「もうちょっと東のコースを通ると思っていたので。25日の前の日までは漁をしていて、大丈夫かなと思っていたが、急に西寄りになったんで慌てて避難してきた。地元の港だと結構波が来るので」
港周辺の小売店では、雨戸を取り付ける作業に追われていました。
港周辺の小売店
「(Q.台風接近までまだ時間はあるが)このくらいの風でもう入れとかないと自分が飛ばされる。もう少し台風が東の方に行くとよかったちゃけどな…。(Q.急に予報が変わった)変わったからなぁ…」
■被害残る震度6弱の被災地は
今月8日の地震で震度6弱を観測した日南市。海沿いにある鵜戸神宮では石灯籠がいくつも倒れ、地割れができるなど被害が出ていました。余震を警戒して石灯籠は倒れたまま。そこへ台風です。実際、過去の台風では被害があったといいます。
鵜戸神宮禰宜(ねぎ)河野博文さん
「2年前に被害があって、この門の銅板を張り替えている。ここが半分以上、全体的に剥がれた。(Q.この辺りは風が)強いですね。風もだが雨が心配で。色んなところでがけ崩れとかあるので、そこがまた崩れてしまわないか心配」
高知県では、クラフトビールに香りや苦みを添えるホップをめぐって台風に翻弄される人がいました。
ムカイクラフトブルーイング ケネス・ムカイさん
「これが26日朝に収穫したもの。今年だったらあと2週間待ちたかった。でも台風が来てるから。(ホップは)デリケート。風があまり強いと」
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■活発な雨雲“アウターバンド”■活発な雨雲“アウターバンド”
26日の宮崎県内は、青空が広がる時もありましたが、台風の接近前から大雨が降りつけました。台風の外側に広がる活発な雨雲『アウターバンド』のせいです。発達した積乱雲でできたこの雨雲が太平洋側の広い範囲にかかりました。27日にかけて東海から九州の太平洋側では100ミリ以上の大雨が降る恐れがあります。
今回改めて浮き彫りとなった進路予想の難しさ。台風から遠く離れた各地でも船を固定するといった備えに追われました。
和歌山県の漁師
「だいぶコースが変わって鹿児島の方へ向いていきましたから。念のため、台風やしね」
同じく台風がまだ遠い大阪府泉佐野市には、土のうに詰めるための土が到着しました。当初、28日にも接近の可能性があり、6年前のいわゆる“関空台風”の再来かとも言われていた関西地方。市民から要望があり、土のうを追加で用意したといいます。
泉佐野市危機管理課 大石翔也係長
「(進路の)予想がなかなかつきにくいところがありますので、本市としてもどれだけどれくらいの期間警戒すればいいのか困惑しているところではありますけど。気を緩めず準備をしっかりしていきたい」
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