一般ドライバーが客を運ぶ「日本版ライドシェア」のサービスが4月に東京23区や京都市で先行して導入され、4カ月がたった。国は普及を急いでいるが、需要は低い模様だ。札幌圏でも6月に始まったが、車を見る機会はほとんどない。北海道の場合、特有の事情があるようで--。【金将来】
観光シーズンや通勤時間帯などに一般ドライバーを活用してタクシーの不足分を補うのがライドシェアだ。国が主導する施策だが、民間調査会社のMM総研(東京都)が6月下旬、全国の男女1000人を対象にインターネットでアンケートを実施したところ、「利用したい」との回答は18・3%にとどまり、「利用したくない」は81・7%に上った。
ライドシェアはタクシー会社が一般ドライバーを管理する。北海道運輸局によると、8月21日までに札幌圏で28社55台に事業を許可した。実際に21社23台が稼働中という。だが、街中であまり見かけないのはなぜなのか。
そもそもライドシェアはタクシー不足を補うことが狙い。札幌ハイヤー協会によると、札幌交通圏のタクシーの実車率は今年5月に36・85%と、夏場は「足りている」状況だ。一方、今年1月は43・32%と、冬場に需要が高まる傾向がある。このため、タクシー会社の多くは繁忙期に向けて準備を進めている。
はまなす交通(札幌市西区)を含めた「さわやか無線センター昭和グループ」が北海道運輸局から割り振られたライドシェア運用台数は計6台。加藤修一社長は「タクシー不足が懸念されるのは、大雪と忘年会、新年会シーズンが重なる冬の期間。それまでに社内で運用のノウハウを得て、未経験の一般ドライバーを採用した際の教育体制を整えたい」と話す。
現在、普段はタクシードライバーとしての経験がなく配車などにあたる従業員が週末の夜にライドシェアのドライバーとして、繁華街のススキノから客を乗せている。
加藤社長はライドシェアに乗り出した理由について、第一に冬場の客の利便性向上を挙げる。とはいえ、一週間で忙しくなるのは主に週末の夜中の4時間。そのときのためだけに正社員を雇うことは現実的でなく、ライドシェアドライバーの時給制アルバイト雇用を考えているという。加藤社長は「別の収入源を確保したい自営業の人や、副業ができる会社員などに来てもらえたら」と言う。
一方、一般の人がドライバーになろうとするときにつきまとう不安の一つが客とのトラブルだ。ただし、ライドシェアのシステムが未然防止を担保する。金額とルートが事前に決定されるため、「ルート間違い」や「乗り逃げ」が起こる心配はない。
普通2種免許が不要なライドシェアドライバーはタクシードライバーに比べて負担感の少ない側面もある。予約に対応して現地に向かう運用のため、路上の客を乗せるタクシーのように運転中に歩道に目を配る必要がない。ドライバーは運転に集中でき、事故が起きづらい。目的地までのルートが事前に決まっており、街の道を覚えなくても問題がない。
検討が続く課題もある。道内の冬道は道路状況が悪く、積雪で道幅も狭くなる。渋滞が起こることは珍しくない。タクシーの場合、乗車距離のほか、乗車時間に応じて運賃が変わる。だが、ライドシェアは、事前に金額が決定されるため、渋滞で乗車時間が長くなっても、運賃に反映できないという。加藤社長は「いまはまだ手探り状態。冬までに課題を解決する糸口を見つけたい」と話した。
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