泉房穂・前兵庫県明石市長=東京都千代田区で2023年8月6日、前田梨里子撮影

 兵庫県明石市の市役所庁舎内に保管してあった生活保護費203万円が2019年に紛失した問題で、前市長の泉房穂氏が全額を弁済していたことが判明した。問題発覚時に市長を務めていた。これにより20日が期限となっていた地方自治法上の金銭債権の時効(5年)が消滅した。

 紛失は19年8月21日、生活福祉課の金庫に保管していた現金が少ないことに職員が気付き発覚した。帳簿と照らし合わせたところ203万7115円不足していた。金庫の鍵は執務時間中は掛かっていなかった。市は窃盗事件として明石署に被害届を提出している。

 市によると、毎年度の決算で同額を「収入未済額」として計上し続けてきた。時効が迫る中、23年末ごろに職員有志が弁済を計画。泉氏にも声を掛けたところ「自分が全部返す」と24年1月、全額を支払った。泉氏は既に市長ではないため、法的には「第三者弁済」という位置づけになる。

 泉氏はX(ツイッター)で「市長とは『結果責任』を取る立場だ。副市長や職員らに責任を負わすわけにはいかない。事件発生時の市長である以上、他に取るべき選択肢はないと思う」(1月)と理由を説明した。

 一方で、窃盗罪としての公訴時効は7年、不法行為による損害賠償請求権の時効は20年と刑事・民事それぞれ有効期限内だ。原田浩行総務局長は「事件としては未解決のままなので犯人検挙に向け、警察の捜査に引き続き全面協力していく」と話している。【入江直樹】

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