欧州主要国は近年、インド太平洋地域で軍事的なプレゼンスを強め、日本への部隊派遣や自衛隊との共同訓練を積み重ねている。22日にはイタリア海軍の空母「カブール」が海上自衛隊の横須賀基地(神奈川県)に寄港。この2日前にも、ドイツ海軍のフリゲート艦と補給艦が東京国際クルーズターミナル(東京都)に寄港した。
「私たちの任務はドイツ海軍のインド太平洋地域におけるコミットメントを可視化すること。同盟国・同志国との絆を深め、今後あり得るかもしれない対立を未然に防ぐことだ」。艦隊を率いるドイツ海軍のアクセル・シュルツ准将は20日の歓迎式でこう述べた。
式典にはペトラ・ジグムント次期駐日ドイツ大使も出席。ロシアによるウクライナ侵攻を巡る日本の支援に謝意を示しつつ、「国連憲章と国際法の有効性は欧州だけではなく、インド太平洋地域でも圧力を受けている」と警鐘を鳴らした。
ドイツ海軍は今後、海上自衛隊との共同訓練に臨むほか、海上で積み荷を移し替える「瀬取り」など、北朝鮮の関与が疑われる違法な海上活動の警戒監視にも当たるとしている。
ドイツ海軍の日本寄港は2021年11月以来、3年ぶり。前々回は02年だったため、寄港の間隔が大幅に短縮された。空軍も22年9月、戦闘機部隊が日本に初めて飛来した。今年7月にはドイツとフランス、スペインの戦闘機部隊がインド太平洋方面に展開する合同演習「パシフィック・スカイズ」の一環で来日し、航空自衛隊と共同訓練に取り組んだ。
日本との連携強化は、イタリアとドイツにとどまらない。21年には、フランス海軍の練習艦隊「ジャンヌ・ダルク」と、イギリス海軍の最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を中心とする空母打撃群が相次いで日本に寄港。それぞれ日本を含めた多国間で共同訓練を行った。
こうした欧州諸国の動きは、中国の活発な海洋進出や軍事的な威圧が念頭にあるほか、ロシアがウクライナで北朝鮮製のミサイルを使用しているといった実態も背景にある。
自衛隊制服組トップの吉田圭秀統合幕僚長は8月1日の記者会見で「インド太平洋と欧州・大西洋の安全保障が切り離せない状況になっている」との認識を示した。その上で「国際法上も人道法上も許されないロシアの侵略行為を戦略的失敗に帰結させることが、世界の平和と安全に必要不可欠な時期に来ていると私は思う」と、欧州諸国と連携する重要性を訴えていた。【松浦吉剛】
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