東京都が花粉症対策として植えた「少花粉スギ」などの苗木が、野生動物に食べられる被害が相次いでいる。多くはシカ(ニホンジカ)による食害とみられるが、中には国の特別天然記念物・ニホンカモシカが出没するケースも。カモシカは捕獲が禁じられており、関係者は「追い払うこともできない」と対応に苦慮している。
JR五日市線武蔵五日市駅から4キロ足らずの距離にある、東京都あきる野市深沢。記者は今春、花粉症対策事業地を現場取材した際にカモシカを目撃した。親子とみられる2頭が悠然と動き回り、若木の葉を探して食べているように見えた。
この現場は、都が花粉症対策としてスギなどの人工林を伐採し、2018年に花粉の少ないスギとヒノキを約2万本、広葉樹を約4000本植えたエリアだ。
都の花粉症対策を担う外郭団体によると、植林から5年以上が経過しても苗木がうまく育っていないという。原因は野生動物による食害だ。
シカは鳥獣保護法で捕獲が認められているが、カモシカは特別天然記念物として保護する必要があり、原則として捕獲は禁止。関係者は「カモシカを頻繁に見かけるのに、苗木を食べられても指をくわえて見ているしかない」と話す。
都によると、関東山地が保護対象地域に指定された1984年以降、カモシカの保護を続けている。都のレッドデータブックによると、都内に生息する個体数は推定207頭で、この数年ほぼ横ばいで推移している。
ただ、かつては山奥にいたカモシカが市街地に近い山林でも目撃されるケースが増えている。人家の近くまで生息域が拡大している理由は明らかになっていない。
外郭団体は取材に対し「防護柵をつくって植林をやり直す」と話している。【寺田剛】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。