JR日豊線日出(ひじ)駅(大分県日出町)から南東へ車を10分ほど走らせた海沿いに、「回天大神(おおが)訓練基地記念公園」がある。眼前に別府湾を望むこの地には終戦直前、人間魚雷「回天」による特攻作戦に加わった若者たちが集まり、訓練生活を営んだ。
回天は太平洋戦争で日本の戦況が悪化した1944年、兵器庫に眠っていた「九三式魚雷」を改造して作られ、人間が乗り込んで敵艦に体当たりする特攻作戦に使われた。敗戦までに計28回出撃。回天を搭載した潜水艦の乗組員や整備員らを含め1000人以上が犠牲になったとされる。
大神基地は、山口県の大津島などに続き、海軍工廠建設予定地だった場所を回天訓練の拠点に転用する形で開設。一帯には、現在も遺構として残る格納壕や魚雷の検査に使うプールがしつらえられ、45年春以降、搭乗員285人が訓練生活を送った。8月初めに搭乗員や整備員のうち8人が出撃し、愛媛県南部の麦ケ浦へ進出したが、待機命令がかかったまま終戦を迎えた。
戦後、訓練に参加した元隊員らでつくる「大神回天会」が中心となり、作戦で犠牲になった人たちを弔う行事を続けてきた。だが、2018年は行事に元搭乗員の参加がなかった。
高齢化で会員数が減り、記憶の継承が課題となる中、町が基地跡の一部を整備した公園は15年に完成した。訓練に使われた「回天一型改一」(全長約15メートル)の実物大模型とともに、写真や資料を展示。若者たちを「必死」の作戦に向かわせた戦争の残酷さを伝える。
公園は地元の小学生の他、修学旅行生の見学も受け入れ、平和学習の場として活用されている。【李英浩】
回天大神訓練基地記念公園
大分県日出町大神5673の55。大型バスなどが止められる駐車場あり。ボランティアによるガイドウオーク(有料)で遺構の解説を受けることができる。ひじ町ツーリズム協会(0977・72・4255)。
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