若年層の人口減少が進む高知県で農業の担い手となる若者を増やそうと、高知大が最先端の農業技術を学べる農林海洋科学部農林資源科学科の定員増を目指している。地方国立大の定員増を認める文部科学省の特例を利用し、3月末に増員を申請。審査結果は6月にも出る見込みで、承認されれば2025年度から定員を15人増やして150人とする。
総務省の住民基本台帳人口移動報告で、高知県では23年の転出者から転入者を引いた転出超過数が20~24歳で1236人。県の推計人口では、29歳以下の人口は10年10月には19万3875人だったが、24年4月には約4分の3の14万5635人に減った。大学進学や就職時の県外流出をどう防ぐかが課題となっている。
高知大は定員増が認められれば、卒業した学生の県内への定着を目指す「地域志向枠」(定員15人)を農林資源科学科に新設する方針だ。国立大の定員増を巡っては、18歳人口の減少を踏まえ、文科省が原則として認めてこなかった。ただ、若者の地方移住や地域産業創出のため、「地方創生に資する」という要件で首都圏の1都3県以外の地方国立大で定員増を認める特例を22年度に導入。23年度にこの特例が初適用され、島根大80人▽広島大70人▽徳島大30人――の増員を認めた。
高知県は農林水産業が基幹産業だが、県全体の84%を森林が占め農地が少ない。狭い面積で農業所得を向上させるためビニールハウスを使った施設園芸に磨きをかけた結果、面積当たりの農業生産額(米・畜産・加工産物を除く)は全国1位だ。施設園芸では全国有数のノウハウを持つ。
高知大は県などとともに、ビニールハウス内の環境や生育状況などのデータをデジタル化して共有し、経験や勘だけに頼らない農業を目指す最先端技術「IoP(インターネット・オブ・プランツ)」の研究に取り組んでいる。高知大としては、定員増を通じて県の基幹産業である農業の担い手を県内外から集め、産業振興につなげていきたい考えだ。【前川雅俊】
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