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 8日午後4時43分ごろ、宮崎県で最大震度6弱を観測する地震が発生。宮崎県と高知県、種子島・屋久島地方、愛媛県と大分県の一部に一時津波注意報が出された。

【映像】南海トラフ地震 想定される各地の震度

 気象庁は、南海トラフ巨大地震が発生する可能性についての評価検討会を行い、南海トラフ巨大地震の震源域で新たな大地震が発生する恐れがやや高まったとする「巨大地震注意」を発表した。

「地震の想定震源域では新たな大規模地震の発生の可能性が、平常時と比べて相対的に高まっていると考えられる。今後もし大規模地震が発生すると、強い揺れや高い津波が生じると考えられる。ただし、特定の期間中に大規模な地震が必ず発生することをお知らせしているものではない」(気象庁地震火山部 束田地震火山技術・調査課長)

 『ABEMA Prime』では、今回発表された情報の意味や南海トラフ巨大地震発生時の影響、今後の備えについて専門家に詳しく聞いた。

■初発表「巨大地震注意」の意味は

 南海トラフ巨大地震が発生する可能性が普段と比べて高まったと評価された時などに発表される「南海トラフ地震『臨時情報』」。想定震源域でM6.8以上、プレートで異常な現象が観測されると(フェーズ1)、5〜30分後に臨時情報「調査中」となり(フェーズ2)、2時間程度で「警戒」「注意」「調査終了」が発表される(フェーズ3)。

 日本地震予知学会会長、静岡県立大学客員教授の長尾年恭氏は「今回の日向灘の震源は想定震源域のちょうど端、またM6.8以上だったので、自動的に調査中になる。『巨大地震注意』が初めて発表されたが、M7.0以上の地震が起きた時に出すと書いてあり、これもある意味機械的に出たものだ。気象庁の記者会見では、異常なゆっくりすべりは今回起きていないこともわかったので、非常に深刻な注意情報ではないと考えていいと思う」と説明。

 一方で、「ゆっくりすべりが起こった場所のひずみは解放されるが、それ以外の上下側・東西側は逆にゆがみが溜まっている。テーブルクロスの1カ所を引っ張るとそこは動くが、両側はしわが寄ったりするわけだ。要するに、歪みを隣の場所に移す現象であり、危険性が高くなっている点は非常に心配している」と述べる。

 また「1週間何も起きなかったら安全になるわけではない」と警鐘を鳴らす。「会見では、“普段よりも数倍地震の確率が高くなった”と言っている。“今後1週間ぐらい”ということだが、これに全く科学的な根拠はなく、人が避難をして耐えられるのが1週間ぐらいだろうということ。特別養護老人ホームや、津波の浸水域の方は避難あるいは備えをしてくれというもので、やはり津波に対する準備が一番重要だ」。

■南海トラフは「必ずくる。しかし、いつかは我々専門家にもわからない」

 南海トラフは100年から200年のペースで繰り返し地震が発生し、想定震源域は西側と東側に分けられている。長尾氏は「安政東海地震と安政南海地震は32時間後に起きた。昭和東南地震と昭和南海地震は2年空いているが、地震学ではほぼ同時と言っていい。300年前の宝永地震はいっぺんに破壊したと考えられている。歴史的には東側から割れることが多いが、コンピューターシミュレーションの進歩や古文書の詳細な解析を行うと、西から割れた時に九州の沖合が引き金となることもあるようだとわかってきた。そのため震源域が広がり、宮崎県の沖合も想定震源域に入った」と話す。

 南海トラフ巨大地震の被害想定は、東日本大震災よりも大きい。死者数は、東日本大震災の1万9775人(今年3月8日時点)に対し、32万3000人、被害総額は約16兆9000億円に対し、220兆3000億円となっている。

 背景にあるのが津波の到達時間で、静岡の焼津市や和歌山の太地町・串本町、高知の室戸市などは、高さ3mの津波が3分で到達すると予測されている。長尾氏は「一番の違いは地震と陸地までの距離。東日本の時は最低でも20〜25分あったが、南海トラフは揺れている間に津波が来る。死者数もその点が非常に大きな要因となっている」と説明。

 さらに、「南海トラフ巨大地震は必ずやってくる。2030年代は可能性が高くなり、2040年、2050年ぐらいまでにはほぼ確実に発生するだろうと言われている」とし、「ロシアンルーレットのように、弾がどこかの断層に入っている。引き金を引いて今回は出なかったかもしれないが、次か、次の次かもしれない。よく『南海トラフ巨大地震はきますか?』『これだけこないなら大丈夫ではないか?』と質問されるが、我々ですら“必ずくる。しかし、いつかわからない”という状況だ」と明かした。

■“地震への備え”は…「想像力を持って」

 政府や気象庁は、「地震への備え」を再確認することを呼びかけている。具体的には、家族との連絡手段や集合場所、非常時に持ち出すものの用意などだ。

 その中でも水の問題について、長尾氏は「お風呂の水を流さないというのは良い対策。150〜200リットルあるが、これをペットボトルでは備蓄できないので、お風呂の水は次入る前に流す。また、災害用やキャンプ用に泥水などを飲めるストローもあるので、そういうものも買っておく。上水道は比較的早く直るし、給水車も来るが、下水が動かなければトイレも流せない。上下水道はペアで直す必要があることを考えておいていただきたい」と促す。

 また、津波対策について、「SRCやRCなどコンクリート造りの建物は大丈夫だろうが、木造建築は基礎と建物との連結部分が弱い。また揺れで壊れなくとも、津波に関しては想定浸水域に入っているかどうかをご家族などとまず確認してほしい。その上で、高い所に逃げるしか対策はない」と指摘。

 さらに、“想像力”を持つことが大事だとし、「海水浴場は非常に難しいが、湘南海岸等であれば20分程度は地震発生から余裕があるので、すぐに陸に上がって逃げる。海のレジャーを全面的に禁止にすることはできないし、する必要はないと思う。現代は携帯が繋がらないと全く情報を得ることができないので、私はキャリアを3つ持っている。地図をダウンロードしておくなど、オフラインでできる準備をするのも良い対策だ。ひとつ大事なのは想像力を持ってもらうこと。長い揺れがきた時には“とんでもないことが起きた”と、情報がなくても安全な高いところに逃げることが大事だ」と呼びかけた。(『ABEMA Prime』より)

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