インタビューに答える京都大防災研究所の矢守克也教授=京都府宇治市で2020年1月9日、川平愛撮影

 宮崎県で最大震度6弱を観測した8日の地震で南海トラフ巨大地震の臨時情報「巨大地震注意」が発表された。気象庁は南海トラフ地震が想定される地域で今後1週間程度、同規模以上の地震発生に注意を呼び掛けている。私たちはどのように受け止めて生活すればよいのか。災害心理学が専門の京都大防災研究所の矢守克也教授に聞いた。【聞き手・露木陽介】

 ――2017年に臨時情報の運用が始まってから初めての発表になりました。

 ◆ついに発表となりましたが、見聞きする範囲では現時点で大きな混乱はないようです。ただ、和歌山県白浜町で海水浴場を閉鎖するなどした一方、高知市でよさこい祭りが通常通り開催されるなど、対象となった地域でも、避難情報も含めて自治体間で対応が分かれました。

 ――臨時情報のうち、今回の「巨大地震注意」はどう考えればよいのでしょうか。

 ◆新型コロナウイルスに対応したときと同じように考えればよいです。注意は払いつつも日常生活を普段通り過ごしていく、という意味合いです。自治体の対応が分かれること自体は悪いことではなく、海への近さなど各地域の状況を踏まえ、リスクの大きさを考えた結果だと言えます。

 ――「地震への備えの再確認」が呼び掛けられる一方、物資の買い占めの懸念も出ています。

 ◆「普段通り」がキーワードですから、必要と思われる物資を、いつも買う程度の量だけ購入すればよいです。いつもの10倍も20倍も買ってしまう方がよほど社会の混乱につながってしまいます。今回を機に、家の耐震補強や備蓄品など日ごろの備えを今一度見つめ直してもらえればと思います。

 ――気象庁は「南海トラフ巨大地震の発生確率が普段より数倍高くなった」としています。どれほどのことなのでしょうか。

 ◆国は南海トラフ巨大地震が今後30年以内に70~80%の確率で起きるとしています。これを1週間以内に換算すると「1000回に1回程度」です。それが今回は「数百回に1回程度」に上がったということになります。桁は一つ上がりましたが、1週間以内に絶対に起こるというものではありません。もちろん、1週間が過ぎたからといって、その後全く発生しないわけでもありません。普段の確率に戻るということです。

 ――今後私たちはどのような点に留意すればよいでしょうか。

 ◆確率的には何も起きない方が大きいですが、今回の発表を「空振り」と捉えてはいけません。災害への備えを確かめる「素振り」の機会として、かぶとの緒を締め直しましょう。夏休みで普段生活していない場所に行くことも多いですが、災害が起こったときの行動を確認するようにしておくと安心です。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。