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子どもたちに「どんな仕事や夢だって、自由に挑戦できる」ことを伝えたいと、高校生が中心となって立ち上げたイベント「こどもキャリアサミット2024!」が、今月7~9日、東京都内で開かれた。小学生から大学生まで約100人が参加し、キャリアについて考えたり、将来実現したい夢について話し合ったりして盛り上がりを見せた。

イベントに参加した子どもたちは、アートや教育、AI・テクノロジーや旅行、スポーツ、医療、街づくりなど様々な分野に区分けされたグループに入り、同じ分野に興味を持つ中高生・大学生らと一緒に自分が将来かなえたい夢や、やってみたい仕事について議論。

気分によって音や映像が飛び出す液晶のアイデアを出す子どもたち=東京都中央区 この記事の写真は4枚

「客室乗務員の服に翻訳機がついていたら一度にたくさんの人と話せるのでは」「気分を感知したAIによって映画や音楽が自動で流れる超薄型のタブレットを開発したい」など、自由な発想が飛び交った。

最終日の9日には、実際に協賛企業の大人たちの前でプレゼンテーション。実現可能性などについて評価され、優秀なチームには企業サポートを受けられるといった賞が与えられた。

科学者になるのが夢という小学5年生の庄子怜さんは「科学に詳しい人に出会えたらうれし い」と思って参加したという。科学をテーマにした人気マンガ「 Dr.STONE(ドクターストーン)」がきっかけで科学の面白さにハマったという。「たくさん実験をして人を救うような薬を開発したい」と話す。イベントでは、他の小学生や高校・大学生らとともに「ヒトの臓器を品種改良することができるか」というテーマで話し合った。普段あまり接すること のない年齢層の人たちと夢やキャリアについて話しあい、「最初は緊張したけど、研究も知らない人と会って話すうちに良いアイデアが生まれるものだと思うから、そういう練習だと思えるようになりました」と話した。

ホワイトボードに次々と書き込まれる豊富なアイデア=東京都中央区

小学 4 年生の高山晴蘭さんは、絵を描くのが好きで、将来はグラフィックデザイナーになりたいと話してくれた。「アート」のグループでは、人の気持ちに合わせて音楽や映像が流れる巻物式のタブレットの開発について「人の気持ちを読み取るために、本に心拍数を図る機械を付けられないか」などのアイデアを出したという。「お兄さんお姉さんが出すアイデアも面白くて楽しいです」

客室乗務員になりたいと話してくれたのは小学 5 年生の後藤紗友凛さん。客室乗務員がどうすれば今よりも働きやすくなるのか、翻訳機がついた服などのアイデアを出した。「小学生のアイデアの方が、自由でたくさん出るけど、現実的には難しいものもある。それを、高校生や大学生のお兄さんお姉さんが、どうやったら実現できそうか、一緒に考えてくれるのが楽しい」と笑顔を見せた。

■フィジーで出会った子どもたちの「夢」がきっかけ 学生団体創設した瀬戸さん

学生団体「Stars」を立ち上げた瀬戸ゆず果さん

主催した学生団体「Stars」は、これまでも「子どもとキャリア」をテーマに、地域の店で子どもたちが職業体験をしたり、プロに質問したりするイベントを開催してきた。創設者の瀬戸ゆず果さん(17)=広尾学園高校 3 年=が2023 年、文部科学省主催の留学促進キャンペーンで、米国・シリコンバレーとフィジーに行ったことがきっかけだ。

特にフィジーで出会った村の子どもたちは、公教育が行き届いているにも関わらず、多くが家業を継ぐことから高校を卒業するのは 5%ほど。「将来の夢を聞くと、女の子はみなそろって看護師と答え、男の子は兵士かパイロットと話す。それ以外の職業の選択肢を知らないようで、夢を見つける環境がないことに驚いた」と話す。

主催したStarsの瀬戸さん(右から2番目)と、イベントに参加した子どもたち=東京都中央区

翻って、日本。学校教育は行き届いていても、家庭の収入によって、習い事や旅行などができる子と、そうでない子がおり、「格差」が生まれていると感じていた。そうした格差によって子どもたちが将来やりたい仕事を見つけても、挑戦する機会が失われる可能性があるのではないか。そう考えて、小・中・高・大学生みんなでキャリアに挑戦するイベントを創りたいと考えたという。

「子どもにとって普段頼れる存在は親や学校の先生ですが、それ以外にも同じ分野に興味を持つお兄さんお姉さんという縦のつながりを見つけてもらい、イベント後も好きなことに挑戦する力を身につけてもらえたら」と話す。(今村優莉)

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