娘が事故に遭った現場を見つめる安藤正恵さん=千葉県木更津市で、2024年4月13日、近森歌音撮影

 今年に入り、千葉県内で交通死亡事故が多発している。18日現在、44件(昨年同日比8件増)で、全国ワーストとなっている。交通事故で2019年、最愛の娘を亡くした木更津市の安藤正恵さん(49)は「車は鉄の塊。事故をなくすには、一人一人の運転に対する意識にかかっている」と訴える。【近森歌音】

 安藤さんの次女、音織(ねおり)さん(当時8歳)が事故に遭ったのは19年4月23日。小学校へ登校途中で横断歩道を歩いていた音織さんに、時速50キロ以上で走る軽乗用車が襲った。病院に運ばれたが、帰らぬ人に。関係者によると、音織さんと一緒だった同級生の女子児童も意識が戻らず、23年8月に亡くなったという。

 「いまだに後悔している。ここまで送ってきてあげればよかった」。間もなく事故から5年を迎える4月中旬、事故現場を訪れた安藤さんは、小声でつぶやいた。片側2車線で通行量の多い交差点だが、信号が黄色に変わった直後に交差点に進入する車もいた。安藤さんは「規制以上の速度が出ている車も多いと感じる」と話す。

安藤音織さんの祭壇には、入学する予定だった中学校のブラウスとリボンが飾られている=千葉県木更津市で2024年4月13日、近森歌音撮影

 安藤さんは大切な人を失った遺族として、県内の警察署などで自身の体験を語る講演を続け、命の大切さや事故の悲惨さを伝えている。

 しかし、事故はなくならない。安藤さんは「取り締まりを厳しくしたり、厳罰化されたりしても、一人一人の意識がないと変わらない。事故が起こりやすい右左折時などは特に集中して運転してほしい」と願う。

 県内の交通人身事故件数は悪化の傾向にある。県警交通総務課によると、23年の発生件数は1万3564件(前年比341件増)で、全国で9番目に悪かった。また、事故による死者数は127人(同3人増)で、うち65歳以上の高齢者が69人と約半数を占めた。小学生の事故死はなかったが、39人が重傷となり、通学中に事故に遭うケースもあった。

 県警も小学校などで交通安全教室を開いたり、高齢者の免許返納を促したりなどの対策を講じている。同課の担当者は「子どもが巻き込まれる事故も多発している。横断歩道を渡ろうとしている歩行者がいたら、必ず手前で一時停止して道を譲ってください」と話す。

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